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「悪性グリオーマ」浸潤2パターン解明 岡山大病院

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)脳神経外科の市川智継助教らは、がん細胞が脳の深い部分まで広がり、治療が難しい脳腫瘍の一種「悪性グリオーマ」の新たな治療法開発に取り組んでいる。独自に作ったがん細胞株を用い、2通りあるがんの広がり方(浸潤)を解明。有効な治療薬づくりを目指す。

 市川助教によると、悪性グリオーマの浸潤は、がんに栄養を運ぶ「新生血管」をつくりながら島のように広がる例と、新生血管を伴わず大きな腫瘍部から離れたエリアにがんが飛び、小さく点在する場合の2通りある。大きな塊は手術で取り除くが、小さな浸潤がんの治療法はなく、生存率を下げる原因になっているという。

 浸潤がん細胞は動物モデルが存在せず、研究が進まなかったが、市川助教は米留学時代の1998年から研究に着手。犬の悪性グリオーマ細胞株のクローンをつくる過程で、昨年までに、新生血管の有無によって異なる2通りの浸潤がん細胞を別々に発見、ラットやマウスの脳細胞内での浸潤パターン再現に世界で初めて成功した。

 動物実験などで、浸潤に関与する遺伝子が複数存在することも確認。その働きの解明や、新たな関連遺伝子の発見に向けた解析に取り組んでいる。

 さらに、関連遺伝子を標的として浸潤を抑制したり、がん細胞を死滅させる治療薬開発につなげる方針。市川助教は「浸潤のメカニズムを解明し、病気に苦しむ患者さんの治療につなげたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年07月11日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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