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(4)医療クラーク 多忙な医師の事務軽減

診察室で那須部長(中央)の指示を受け、電子カルテを入力する山下さん=岡山赤十字病院

 「腰に痛み」「レントゲン撮影」「腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症」…。

 岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の外来診察室。腰痛を訴える患者を診た那須正義整形外科部長(64)の口から、テンポよく言葉が飛び出す。

 傍らにいるのは整形外科専属の医療クラーク・山下明美さん(48)。電子カルテ作成のため、症状を素早くパソコンに打ち込み、病名や必要な検査項目にチェックを入れていく。

 同病院の整形外科医9人が1日に診る患者数は、1人当たり最多で40人に上る。山下さんは「私たちの仕事が、多忙な医師と患者さんが向き合う時間を少しでも増やすことにつながれば」と話す。

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 病院によって「メディカルアシスタント」などとも呼ばれる医療クラークの正式名称は「医師事務作業補助者」。その名の通り、本来医師だけが担うことのできるカルテや診断書、処方せん作成などの代行が主な仕事だ。

 2008年度、厚生労働省は医療クラークを診療報酬の加算対象とした。狙いは過酷な長時間労働が問題視された急性期病院勤務医の負担軽減。岡山赤十字病院は2年前に採用をスタート、現在は内科や小児科など31診療科に26人を配置している。

 交通事故やスポーツなどによるけがで受診する患者が多い整形外科。緊急手術が次々入り、生命・損害保険関係の書類作りなどの事務作業も膨大な量に上る。このため山下さんを含めた2人の医療クラークが配置されている。

 担当医師の外来時は診察室に入り、つきっきりで電子カルテを入力。このほか保険会社へ提出する手術、入院証明書などを1カ月に約300通作成する。那須部長は「手術に診察、診断書作成…と何役もこなしてきたが、山下さんらのおかげで、苦手なパソコン作業から解放された。本来力を注ぐべき業務に専念できる」とする。

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 年間約26万人、1日に約千人の外来患者が訪れる岡山赤十字病院。午前中の1階ロビーは順番待ちの患者で混み合い、初診や予約のない場合は、2時間近く診察を待つことがあるという。

 待ち時間短縮を含む患者の利便性アップも医療クラーク配置の狙い。同病院では5月に電子カルテを導入したばかりとあって、現時点で短縮に結び付いていないが、「入力作業に慣れればスムーズに進むはず。診断書などは、以前より早く出来上がるようになったと喜ばれている」(総務課)という。

 特別な資格や経験は問われない医療クラーク。山下さんも2年前の採用時は、専門用語だらけの“カルテ解読”に苦労した。半年間の研修でかなり克服できたが、今も分からない言葉は専門書で調べるなど地道な努力を重ねる。

 「病名や症状など、医療に関する知識をもっと習得したい。すべては患者さんに良い環境で治療してもらうためなんです」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年07月22日 更新)

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