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スキルス胃がんの細胞 減少促す物質合成 岡山大大学院・宮地教授ら 新薬開発目指す

宮地弘幸教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の宮地弘幸教授(創薬化学)らの研究チームは、悪性度の高いスキルス胃がんの細胞を、大幅に減少させる効果がある物質を合成することに成功した。効果は試験管レベルの実験で確認しており、動物実験などを経て新薬開発を目指す。

 胃がんの約1割を占めるスキルス胃がんは初期に自覚症状がなく、胃の粘膜の下に急速に広がるため胃カメラでも早期発見が難しい。見つかった時にはすでに腹膜に広く転移して手術できないケースも多い。治療には通常の胃がんの抗がん剤が用いられるが、十分な効果は得にくく、副作用もあるため新薬開発が急がれている。

 宮地教授は、スキルス胃がんの細胞内にあるタンパク質の一種PPARγ(ガンマ)が、魚油などに含まれる不飽和脂肪酸と結び付くと、がん細胞の死滅を促すタンパク質が生成されるケースがあることに着目した。不飽和脂肪酸と構造が似ていて同様の機能を持ち、PPARγと結び付く力がより強い脂肪酸を、複数の有機化合物から合成。「MEKT21」と名付けた。

 効果については共同研究した同研究科の許南浩教授(細胞生物学)、岡山理科大理学部の片岡健准教授(同)が検証。シャーレで培養したヒトのスキルス胃がん細胞約3万個にMEKT21を加えたところ、3日間で約1万個に減少した。正常な細胞にはほとんど影響なかったため、副作用は少ないと期待できるという。

 宮地教授らは「MEKT21は治療薬の候補の一つ。動物実験で効果と副作用を慎重に調べ、新薬開発への筋道を付けたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年08月17日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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