文字 

リンパ球機能高め体内へ がん患者に「移入療法」

山口佳之部長

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)臨床腫瘍科の山口佳之部長らが、がん患者の血液中のリンパ球を採取して刺激し、がん細胞を攻撃する機能を高めた後に体内に戻す「活性化自己リンパ球移入療法」に取り組んでいる。約3年間で外科手術や抗がん剤投与ができない患者ら約200人に実施。腎臓がんなどで一定の腫瘍縮小効果があるという。

 血液腫瘍や間質性肺炎、自己免疫疾患などを併発していない患者が対象。採取した血液10~20ミリリットルから、がんやウイルスなどの異物を敵と認識して攻撃する免疫に関わるリンパ球を抽出して培養する。リンパ球にがんの存在を知らせる「樹状細胞」のほか、がん細胞や特定のがん抗原ペプチド(アミノ酸の結合体)、ピロリン酸と呼ばれる無機化合物などで、培養したリンパ球を刺激。がん攻撃機能を高め、採血から3週間後に点滴で体内に戻す。この治療を平均5回繰り返すが、自身のリンパ球を用いるため、拒絶反応はないという。

 腎臓がんでは約3割の患者に有効との報告もある同療法。同病院では肺、大腸、膵臓(すいぞう)などのがん患者への治療も行っており、「腎臓や膵臓、胆道がんなどでも治療効果に手応えがある。ただ、全てのがんに有効ではない」と山口部長。

 「先進医療」として国の指定医療機関ならば、診察代などは保険適用されるが、同療法での治療費用は全額自己負担。入院は不要で、費用は1回7万3100円に加え、初診料や検査代などが必要となる。

 山口部長は1987年、広島大原爆放射線医科学研究所で、腫瘍外科医としてリンパ球などの研究を始めた。現在、リンパ球の培養に必要な施設が十分整っていないため、一度に対応できる患者は60人。既に十数人の待機患者がいるという。山口部長は「外科的、内科的な治療法がなくなり、訪れる患者が多い。治療と研究を続け、どんながんに有効かを探りたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年08月20日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ