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(7)血尿・蛋白尿 倉敷中央病院小児科副医長 澤田真理子

さわだ・まりこ 鳥取県立倉吉東高、鳥取大卒。倉敷中央病院レジデント、県立広島病院を経て、2009年4月から倉敷中央病院小児科医員、12年5月から現職。

腎臓

 腎臓は、おしっこを作る臓器です。おしっこを作って水分バランスを調節したり、尿毒素物質を排せつしたりしています。ほかにも血圧を調整したり、血液を作るホルモンを作ったり、骨を作るホルモンを成熟させたりと、こっそり大事な仕事をやっている働き者ですよ。

 働き者の腎臓は、少々調子が悪くなっても弱音を吐きません。正常の30%程度の機能になるとやっとむくみ(浮腫)などの症状が出てきますが、こうなるともう元には戻りません。だから、調子が悪くなっているかどうか、普段からきちんと検査して気づいてあげなければならないのです。

集団検尿

 腎臓を最も簡単に検査する方法は、おしっこの検査です。日本では、3歳児健診と幼稚園・保育園での検尿、学校検尿を行っています。おしっこを検査に出せば、痛い思いをしなくても隠れている病気を見つけることができるのです。

 おしっこの検査では、主に血尿と蛋白(たんぱく)尿をみています。本来、尿中に血液や蛋白質が多く出てくることはありません。血尿や蛋白尿がみられると、腎臓や全身の病気が潜んでいるかもしれません。血尿や蛋白尿が出ているよというお知らせがあったら、かかりつけの先生にみてもらいましょう。

血尿

 血尿は、おしっこに血が混ざっている状態です。赤ちゃんによくみられるおむつに付着するレンガ色のおしっこは尿酸といって尿毒症物質が固まったもので、異常ではありません。学校検尿では、顕微鏡的血尿といって見た目は正常なのに検査をするとわずかに血尿を認める人が約1%います。血尿だけであればたいていは大丈夫です。ごく一部に要注意の子がいます。この場合は、たいていは1~2年のうちに蛋白も出るようになります。熱を出したりしてかかりつけの先生にみてもらう時には尿も調べてもらうと安心です。

蛋白尿

 蛋白尿だけの場合は「検査をする前の晩、寝る前におしっこをしたかな?」と確認してください。こどもの場合は体位性(起立性)蛋白尿といって、病気でもないのに蛋白が混じることがあります。安静にしている間に膀胱(ぼうこう)にたまったおしっこで検査することが大事です。安静にした時にも蛋白が出る場合は要注意ですが、こういう子は少ないです。

蛋白尿と血尿

 蛋白尿と血尿の両方があるときは病気が隠れていることが多いので、腎生検という腎臓の組織を採る検査をして2~3カ月の治療を行うことがあります。集団検尿による早期発見・早期治療のおかげで、30年前に比べると慢性腎炎のために腎臓が悪くなってしまう子は10分の1くらいに減りました。

しっかり食べて、運動をしましょう

 昔は急性腎炎(むくみや高血圧がおこる)が多かったので、腎炎と言えば安静と塩分制限というイメージがあるかもしれませんが、慢性の腎臓病がある場合でも基本的には運動も食事も制限はありません(もちろん偏った食事は駄目ですよ)。ましてや病気のうちに入らない程度の血尿や体位性(起立性)蛋白尿では制限は不要です。

 大人の腎臓病で最も多いのは糖尿病や高血圧が原因です。最近は肥満だけでなく痩せすぎも慢性の病気の原因になることがわかってきました。こどもの森にいる間に「早く寝る、しっかり食べる、楽しく運動をする」という習慣を身につけてくださいね。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月03日 更新)

タグ: 子供倉敷中央病院

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