文字 

「技術と経験 全てを患者に」 松岡良明賞受賞・磯崎氏に聞く

 いそざき・ひろし 1974年、岡山大医学部を卒業し、同学部第一外科入局。大阪医科大一般・消化器外科学助教授、岡山大医学部付属病院助教授などを経て2010年から現職。岡山市北区鹿田町。64歳。

 消化器外科医としてさまざまながん治療に取り組んできた、おおもと病院(岡山市北区大元)の磯崎博司院長が、がん撲滅に貢献した個人、団体を顕彰する山陽新聞社会事業団の第17回「松岡良明賞」を受賞した。「迅速、正確な診断と適切な治療」を信念に掲げ、診療を続ける磯崎院長に、今後の活動方針などを聞いた。

 ―胃がん治療では切除範囲を最小限に抑える手術に取り組んでいる。

 「手術中、最初に転移するセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)を特別な色素を使って診断、胃の入り口や出口部分をはじめ、周囲の神経系などの機能をできるだけ温存する方法を用いている。リンパ節への転移がなければ胃の4分の3を残すこともできる。切除範囲を最小限に抑えれば、炭水化物などが小腸まで急速に流入してしまうダンピング症候群による目まいや冷や汗といった症状が軽減され、患者さんの生活の質(QOL)は格段に向上する。120例ほど実施してきた」

 ―手掛けてきた手術は胃がんが約1200例、大腸がん670例、肝胆膵(かんたんすい)がん180例。その領域は多岐にわたっている。

 「医療現場では細分化、専門化が進んでいるが、私は大阪医科大の一般・消化器外科学教室などで多くの手術技術を習得した。1988年から1年間のパリ大学留学では肝移植に携わり、視野も広がった」

 ―がん治療で大切なことは何か。

 「早期胃がんであれば、私の術式を用いることで、胃の機能を残せる場合も多い。がん検診などをきちんと受け、できるだけ早く発見することが何よりも重要だ」

 ―医師として心掛けていることは。

 「迅速で正確な診断を下し、適切な治療を行うこと。がんは恐ろしく、予期しないことが起こりうる病気だが、これまで培ってきた技術や経験など、今持っている全てを患者さんに提供するのが私の務めだ。今後も固定概念にとらわれることなく、常にベストの方法を探り、治療に当たりたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月16日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ