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(8)こどもの森の外科医 倉敷中央病院外科部長(小児外科担当) 佐野薫

さの・かおる 洛星高、滋賀医科大卒。京都大医学部付属病院、高山赤十字病院、京都市立病院などを経て、2002年5月から現職。日本外科学会専門医・指導医、日本小児外科学会専門医。熊本大医学部臨床教授。

こどもの森の外科医って

 桃ちゃん、今日もこどもの森ではたくさんのこどもたちが元気に楽しく遊んでるね。あれれ、顔色の悪い元気のない子がいるよ、病気かな? でも大丈夫、森の病院にはたくさんのやさしい小児科医がいて病気から守ってくれるからね。ところで少ないけれど、森の病院で手術を受けるこどもがいることを知ってるかい。こどもの森の病院にはね、こどもの手術を専門にする「小児外科医」がいるんだよ。こどものことをよく知っていて、こどもの気持ちをわかってくれるやさしい外科医だよ。

手術が必要なこどもの病気ってどんなものがあるの?

 最も多い病気はね、ソケイヘルニアっていうんだよ。足の付け根あたり(ソケイ部)がポッコリふくらむ病気なんだ。おなかの中とつながった袋が飛び出ていて、その中に腸が出るんだ。押さえると引っ込んでしまうのが特徴だよ。痛みがないことが多いんだけれど、まれに「嵌頓(かんとん)」といって、腸がもどらなくなってしまうことがあるんだね。このときはすごく痛くって触ると固くなってるんだよ。痛みが出たときはすぐに病院を受診しようね。ソケイヘルニアは自然には治らないんだ。嵌頓を起こす危険性があるので「小児外科医」と相談して手術の相談をしなくちゃね。

 もう一つ代表的な病気はね「モウチョウ」だね。正式には虫垂炎(ちゅうすいえん)って言うんだよ。おなかが痛くなるこどもはたくさんいるよね。ほとんどは風邪をひいたりおなかをこわしたり胃腸炎による症状なんだ。しかし、おなかの痛いこどもたちの中に、虫垂炎のこどもがいるんだね。特徴はね、最初みぞおちあたりが気持ち悪くなってだんだんと右の下腹が痛くなってくるんだ。痛みにはあまり波がなく、ずうっと痛いことが多いんだよ。痛みが強くなると身をかがめるほどになり、歩いても痛みがおなかに響くようになるんだね。虫垂炎が怖いのは、ほうっておくと虫垂に穴が開いておなかに汚い膿(うみ)が散らばる腹膜炎を起こすことだよ。だからおなかが痛くなったら、ちゃんと小児科医に診てもらおうね。そうそう、虫垂炎は時におなかの真ん中が痛くなって下痢が何回も出て腸炎と同じような症状が出ることもあるので要注意だ。治療は、軽い症状のときはお薬(抗生物質)で治ることもあるけれど手術治療が必要となることが多い病気だね。

新生児とこどもの森の外科医

 こどもの手術はそれほど多いものではないのだけれど、いろいろな種類の病気があるんだ。残念ながら生まれたときから病気を持っているこどもがいて、新生児の森で手術を受けるこどももいるんだよ。生まれたときにすでに消化管に異常のあるこども(先天性食道閉鎖症、十二指腸閉鎖症、小腸閉鎖症、鎖肛など)は生まれて早い時期に手術治療が必要なんだ。そうでないとおっぱいを飲んで大きくなれないだろ。森の小児外科医は体が大変小さな赤ちゃんでも手術をするんだよ。そして病気を持たずに生まれてきた赤ちゃんと同じように成長できるよう、その機能を最大限正常に近づけるよう一生懸命考えて治療をするんだよ。

まとめ

 数少ないながら手術を受けなくてはならないこどもさんが世の中にはおられます。いろいろな病気があり、多くのものは突然こどもに襲いかかります。わたくしたち小児外科医はそのようなお子さんが病気をしたからといって将来の夢や希望を失うことがないよう、最大限の努力をして日々診療に臨んでいます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月17日 更新)

タグ: 子供倉敷中央病院

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