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(11)インフォームドコンセントとセカンドオピニオン 川崎医大総合内科学4教授 川崎医大川崎病院内科部長 瀧川奈義夫

たきがわ・なぎお 岡山芳泉高、岡山大医学部卒。四国がんセンター、クリーブランドクリニックがんセンター(米国)、南岡山医療センター、岡山大学病院などを経て2011年から現職。がん薬物療法専門医・指導医、日本がん治療認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、医学博士。

【図1】インフォームドコンセント

【図2】セカンドオピニオン

 がんの治療はとても多様化してきており、患者さんひとりひとりに対して的確な検査や治療が求められてきています。ただ、その選択肢が広がれば広がるほど、医療者も患者さんも、どれが本当に正しいのかわからなくなってきています。医療の技術的なものにも増して、患者さんがより良いがん治療を納得して受けていただくためには、インフォームドコンセントとセカンドオピニオンは欠くことのできないものとなっています。

インフォームドコンセント

 インフォームドコンセントという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか? これは、検査あるいは治療の同意書に署名をすることではありません。検査、治療、病状の説明などすべての医療行為は、患者さんやご家族に告げて納得してもらうことが必要です。リスクのある処置や治療については、患者、医療者双方の理解を確認する意味で書式を残します。患者さんと医療者の良い信頼関係をつくるための大切なコミュニケーションの場となります=図1参照。ですから、医療者だけではなく、患者さんやご家族の方にも心構えと準備が必要です。医療者、患者さん、ご家族がチームとして病気に対する検査と治療戦略を練り、その方針を決定することがインフォームドコンセントと考えてください。患者さんご自身もチームの一員として、左記のことを実践すればより良いものとなります。

 (1)できる範囲で予備知識を収集しておきましょう。ただし、世の中には確立された治療法とそうでないものが氾濫しています。気になることやわからないことがあれば、その情報を持って相談しましょう。

 (2)信頼できる家族や友人がいればいっしょに話し合いましょう。患者さんが理解しにくかったことを補ってくれることもあれば、患者さんが言いにくいことを聞いてくれることもあります。

セカンドオピニオン

 患者さんが自発的に主治医以外の他施設の専門医に意見を聞くことをセカンドオピニオンと言います=図2参照。患者さんあるいはご家族・代理人が主治医に、これまでの資料を用意してもらいます。決して臆することはありません。どの主治医も患者さんが納得していただけるような治療を望んでいます。

 セカンドオピニオンの長所としては、患者さんの迷いがあるときには、治療法の選択に役立ちますし、しかも同じ意見であれば、主治医への信頼感が増します。他の医師から説明を受けることにより、同じ方針でも違った見方が生まれ、納得できるかもしれません。短所としては、セカンドオピニオンをする医師が、必ずしも最高の医療者とは限りません。その医師が、標準的な治療ではなく自分の慣れている治療法を強調する場合があります。また、初対面でその患者さんの全情報をつかむのはむずかしいこともあります。こうした長所、短所がありますが、患者さんご自身が納得できる治療を目指していくには必要な手段だと思われます。

最後に

 私たち腫瘍内科の医師が川崎医大川崎病院に赴任してから1年半になり、進行悪性腫瘍(肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、卵巣がん、原発不明がん、悪性リンパ腫など)の薬物療法を行ってきました。岡山以外にも、近隣の香川県、広島県、山口県、鳥取県から、遠くは神奈川県からも患者さんが来られており、インフォームドコンセントの充実とセカンドオピニオンを実践しています。ご自分の治療を納得して受けるために、このインフォームドコンセントとセカンドオピニオンを上手に使っていきましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月17日 更新)

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