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(9)感染症 倉敷中央病院小児科医員 和田陽一

わだ・よういち 愛媛県立西条高、東北大卒。倉敷中央病院ジュニアレジデントを経て、2012年4月から現職。

 森の中で夢中になって遊ぶこどもたち。でも、感染症には気をつけてくださいね。感染症とは、ばい菌やウイルスなどがみんなに悪さをする病気のことです。こどもの病気の多くは感染症。まずは病気にならないのが一番ですね。これを予防(よぼう)といいます。では、感染症にかからないようにするには、つまり予防するにはどうすればいいのでしょう。

 そういえばこどもの森で、この前、水ぼうそうが流行していましたね。Aくんは全身に赤くて小さい水ぶくれのあるブツブツがたくさんできましたが、Bさんは少し出ただけですぐ治りました。なぜだかわかりますか。

 感染症にかかってしまうこともありますね。「この前熱が出たとき、抗生物質を飲んだら治ったんだ!」。Cくんはそう言っていますが、本当でしょうか。

手洗いとワクチンで感染症を予防しましょう

 感染症から身を守るために手洗い・うがいをしようね。おうちに帰ったときはもちろん、ご飯を食べる前にもしっかりと、せっけんを使って手洗いをしてね。手洗いのあとにアルコールで消毒すれば、バッチリです!

 そして、ワクチンも感染症からみんなを守ってくれます。おたふくかぜ・水ぼうそうなどの身近なものから、細菌性髄膜炎(ばい菌が脳や神経といった体の大事な場所に悪さをする病気)といった珍しいけどとってもこわいものまで、いろいろな種類のワクチンがあります。

 ワクチンは病気にかからないようにしてくれたり、かかっても早く治るようにしてくれたりします。そう、Bさんは水ぼうそうのワクチンを接種していたから、少しブツブツが出ただけで早く治ったのですね。そして実は、ワクチンはこどもたちを守ってくれるだけではないのです。こどもたちがワクチンで守られると、病気を運ぶことが少なくなり、おとなたちの世界でも病気が減ることがあるのですよ。

抗菌薬

 逆に、こどもの森で感染症を予防するために、おとなががんばらないといけないことがあります。百日咳(ひゃくにちぜき)という病気は、おとながかかっても軽い咳くらいで終わってしまいます。しかし、赤ちゃんにかかると一大事なのです。咳がひどくなり、命の危険にさらされることもあります。最近では、おとなが赤ちゃんに百日咳をうつしてしまうことが問題になっています。すでに海外では、おとなに追加のワクチンを打って、赤ちゃんたちにうつさないようにしているところもあります。こどもとおとな、みんなで協力しないといけないですね。

 感染症の世界では、ばい菌をやっつけてくれるお薬のことを抗菌薬(こうきんやく)といいます。抗菌薬のおかげで、感染症にかかってもたくさんのひとが助かるようになりました。とても大切なお薬なのです。

 実は、風邪や胃腸炎といった、よくある感染症はウイルスが悪さをしていることがほとんどです。そしてウイルスには抗菌薬はききません。ウイルスは、みんなが持っている免疫力で治すしかないのです。鼻水が出ていて、のどが赤かったCくんは、抗菌薬を飲んだから治ったのではなく、自分の免疫力で治ったのですね。ただし、ばい菌が悪さをする病気やインフルエンザなどは森の小児科医に相談して、ちゃんとお薬を飲んでくださいね。

 最近では、抗菌薬がきかないようなばい菌がとてもおおきな問題になっています。しかも、あたらしい抗菌薬はなかなか見つかっていません。抗菌薬が使えなくなってしまうと、体が弱っているひと、おとしよりや赤ちゃん、そして未来のこどもたちが困ってしまいます。そこで、世界中で大切な抗菌薬を大事に使おうという運動が行われています。抗菌薬はとても大切なお薬です。みんなで大事に使いましょうね。

 これで今日のお話は終わりです。手洗いとうがいをわすれずにね。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年10月01日 更新)

タグ: 子供倉敷中央病院

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