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(5)新しい皮膚病診療―診断技術と治療の進歩― 国立病院機構岡山医療センター皮膚科医長 浅越健治
■皮膚悪性腫瘍の診断・検査技術の進歩
・ダーモスコピー
皮膚科では視診が重要ですが、ダーモスコピーという機器を用いて病変を拡大して観察すると、より詳細で正確な診断が可能となります。
ダーモスコピーは単なる拡大鏡ではなく、明るい光源と皮膚からの光乱反射を抑える技術により皮膚の中まで観察し、立体的な画像を見ることができます=図1。当初は主としてホクロに似た皮膚がんと、ホクロやシミとの鑑別に用いられていましたが、研究が進んで現在では、湿疹に似た早期皮膚がん(日光角化症等)などさまざまな良性・悪性皮膚腫瘍に保険適応となっています。低侵襲でとても有用な診断技術です。
・高周波エコー
エコー検査と聞くと腹部など内臓の診断に用いるイメージがあると思いますが、高周波エコー(14メガヘルツ~)の開発により皮膚の微細構造まで観察できるようになりました。当科では33メガヘルツまで使用可能な機器を導入し、皮膚腫瘍の診断治療などに用いています。皮膚がんの病変の広がりや深達度を確認して、より適切な切除範囲を決定することが可能となりました=図2。
・センチネルリンパ節生検
比較的新しい手技で、皮膚がんのリンパ節転移を早期に見つける方法です。転移リスクのある皮膚がんを切除する際に、皮膚病変とともに最も転移を生じやすいリンパ節だけを切除し、早期の転移の有無を確認します。転移がなければそれ以上の外科的治療は行わずに済みます。転移が見つかった場合は追加の治療が行われます。実施可能な施設は岡山県内でも当院など数施設に限られています。
■皮膚疾患に対する新しい薬物療法
どの診療科でもそうですが、近年の薬物療法の進歩には目を見張るものがあります。その代表が抗体製剤(生物学的製剤)と分子標的薬(低分子化合物)です。
抗体製剤の多くは、疾患に関与する細胞表面の分子やそれに結合する物質をブロックすることにより効果を発揮します。一方の分子標的薬は、細胞表面の分子から核に伝わるシグナルを制御します。これらの薬剤は疾患のkeyとなる部分をピンポイントで抑えるため、強い効果を得やすいのが特徴です。
皮膚科でも重症のアトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)、メラノーマなどさまざまな分野の疾患に対して承認され、治療の幅が広がってきています。例えば重症アトピー性皮膚炎患者さんには、アレルギー炎症を起こす物質(サイトカイン)の働きを抑える抗体製剤や分子標的薬が用いられます。
■岡山医療センターでの皮膚科診療
当科では、このような新しい診断技術や薬物療法を取り入れつつ、それぞれの患者さんに適切な治療を選択して提供できるよう心がけています。皮膚疾患でお悩みの方はぜひご相談ください。
◇
国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)
あさごえ・けんじ 岡山一宮高校、岡山大学医学部卒。岡山大学医学部附属病院助手・講師(途中チューリッヒ大学病院客員研究員)を経て、2009年より現職。専門は皮膚科全般、皮膚腫瘍、皮膚外科、アレルギー性疾患。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
・ダーモスコピー
皮膚科では視診が重要ですが、ダーモスコピーという機器を用いて病変を拡大して観察すると、より詳細で正確な診断が可能となります。
ダーモスコピーは単なる拡大鏡ではなく、明るい光源と皮膚からの光乱反射を抑える技術により皮膚の中まで観察し、立体的な画像を見ることができます=図1。当初は主としてホクロに似た皮膚がんと、ホクロやシミとの鑑別に用いられていましたが、研究が進んで現在では、湿疹に似た早期皮膚がん(日光角化症等)などさまざまな良性・悪性皮膚腫瘍に保険適応となっています。低侵襲でとても有用な診断技術です。
・高周波エコー
エコー検査と聞くと腹部など内臓の診断に用いるイメージがあると思いますが、高周波エコー(14メガヘルツ~)の開発により皮膚の微細構造まで観察できるようになりました。当科では33メガヘルツまで使用可能な機器を導入し、皮膚腫瘍の診断治療などに用いています。皮膚がんの病変の広がりや深達度を確認して、より適切な切除範囲を決定することが可能となりました=図2。
・センチネルリンパ節生検
比較的新しい手技で、皮膚がんのリンパ節転移を早期に見つける方法です。転移リスクのある皮膚がんを切除する際に、皮膚病変とともに最も転移を生じやすいリンパ節だけを切除し、早期の転移の有無を確認します。転移がなければそれ以上の外科的治療は行わずに済みます。転移が見つかった場合は追加の治療が行われます。実施可能な施設は岡山県内でも当院など数施設に限られています。
■皮膚疾患に対する新しい薬物療法
どの診療科でもそうですが、近年の薬物療法の進歩には目を見張るものがあります。その代表が抗体製剤(生物学的製剤)と分子標的薬(低分子化合物)です。
抗体製剤の多くは、疾患に関与する細胞表面の分子やそれに結合する物質をブロックすることにより効果を発揮します。一方の分子標的薬は、細胞表面の分子から核に伝わるシグナルを制御します。これらの薬剤は疾患のkeyとなる部分をピンポイントで抑えるため、強い効果を得やすいのが特徴です。
皮膚科でも重症のアトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)、メラノーマなどさまざまな分野の疾患に対して承認され、治療の幅が広がってきています。例えば重症アトピー性皮膚炎患者さんには、アレルギー炎症を起こす物質(サイトカイン)の働きを抑える抗体製剤や分子標的薬が用いられます。
■岡山医療センターでの皮膚科診療
当科では、このような新しい診断技術や薬物療法を取り入れつつ、それぞれの患者さんに適切な治療を選択して提供できるよう心がけています。皮膚疾患でお悩みの方はぜひご相談ください。
◇
国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)
あさごえ・けんじ 岡山一宮高校、岡山大学医学部卒。岡山大学医学部附属病院助手・講師(途中チューリッヒ大学病院客員研究員)を経て、2009年より現職。専門は皮膚科全般、皮膚腫瘍、皮膚外科、アレルギー性疾患。
(2023年02月06日 更新)
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皮膚、 国立病院機構岡山医療センター