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上海との絆守りたい 旭川荘 訪中延期も研修受け入れ

上海市の子育て支援施設を訪問する視察団=2011年9月21日(旭川荘提供)

 上海市と30年近く友好関係を築いてきた社会福祉法人旭川荘(岡山市北区祇園)。領土問題をめぐり日中関係が揺れる中、9月下旬の視察団訪中は延期となったが、上海の医療・福祉関係者らの受け入れは今年も9日から予定通り実施される。同荘は「福祉向上という共通の目標を掲げる者同士の絆を大切にしたい」と、両国の将来を見据え交流継続に努めている。

 旭川荘は、9月25日から3泊4日で中四国地方の福祉関係者約70人による視察団を上海に派遣する計画だった。しかし、中国で反日デモが急拡大した翌日の17日、受け入れ先である上海市人民対外友好協会から「大事なお客さまに迷惑を掛けたくないので延期してほしい」と連絡があり、承諾せざるを得なかったという。

 上海市との交流は、創設者の故川崎祐宣氏(1904~96年)の招きで同市衛生局長が旭川荘を見学した85年にさかのぼる。90年からは毎夏、同荘を利用する障害者やボランティアらによる「福祉の翼訪中団」を上海へ送り、2009年までの20年間で延べ約2500人が現地の障害者らと交流した。翌10年からは上海の福祉事情を知るため、視察団を組織して毎秋訪ねている。

 この間、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に端を発した日中関係の冷え込みに、中国など世界各地で流行した新型肺炎(SARS)問題が重なった03年も訪中は途絶えなかった。それだけに仁木壮・旭川荘副理事長は「事態の沈静化を待って今年も訪中を果たしたい」と言う。

 一方、旭川荘が受け入れた上海からの視察者、研修生は1985年以降、約1500人に上る。今年も10月から12月初旬にかけ、医師、看護師を含む40人が研修。第一陣の高齢者施設の運営管理者と現場責任者ら16人は9日から10日間、介護保険制度についての講義やグループホームの見学、介護実習などに取り組む。

 受け入れ窓口として98年、上海市に開設した日中医療福祉研修センター所長の板野美佐子・旭川荘常務理事は、長年にわたる福祉向上への貢献が認められ9月28日、同市から「白玉蘭栄誉賞」を贈られた。

 日中の懸け橋づくりに心を砕いてきた板野常務理事は「上海の人々との間に築いてきた友情はかけがえのないもの。今後も人間関係を第一に考えて互いに行き来したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年10月07日 更新)

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