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(12)膵臓編 川崎医大総合外科学講師 川崎医大川崎病院外科医長 浦上淳

 うらかみ・あつし 県立津山高、徳島大卒。医学博士。川崎医大消化器外科講師を経て2012年4月から現職。川崎医大病院では数多くの肝胆膵の手術に携わる。日本消化器外科学会専門医、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、日本胆道学会指導医。

 膵臓(すいぞう)はおなかの中でも背中側の後腹膜という所にあり、胃腸などと違って症状が出にくい、検査でもわかりにくいという特徴があります。膵臓の働きは大きく分けて、(1)消化酵素が含まれる膵液を作って十二指腸に出す働き(外分泌機能)と(2)インスリンを作って血液中へ出す働き(内分泌機能)があります。外分泌機能は口から食べたタンパク質などを分解して吸収しやすくするもので、内分泌機能はインスリンで血糖値をコントロールするものです。

膵臓がん

 膵臓の病気の中で最も怖いのが膵臓がんです。膵臓がんの中にもいろいろ種類がありますが、最も頻度が高いのが浸潤性膵管がんで、通常型膵がんとも呼ばれます。膵臓がんの患者さんは年々少しずつ増加しており、毎年約2万7千人の方が亡くなっています。部位別のがん死亡数では男性5位、女性4位です。膵臓がんの危険因子は慢性膵炎、糖尿病、高脂肪食、アルコールと言われています。症状は腹痛、背部痛、食欲不振、黄疸(おうだん)などです。糖尿病の方で血糖が急に不安定になったということで見つかる場合もあります。また症状が出にくいため、かなり進行するまで無症状ということもあります。

 治療は、他臓器に転移がなく切除可能な場合は手術を行います。膵頭部がんの場合は膵頭十二指腸切除術で、膵体部や膵尾部がんの場合は膵体尾部切除術を行います。他臓器に転移があったり、切除不能の場合は化学療法(抗がん剤治療)を行います。

がん以外の膵臓の腫瘍

 膵臓はがん以外にもいろいろな種類の腫瘍ができます。特に低悪性度の腫瘍ができることが多く、代表的なものに膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞(のうほう)腫瘍、漿液性(しょうえきせい)嚢胞腫瘍、神経内分泌腫瘍などがあります。やはり症状が出にくく、偶然発見されることが多い腫瘍です。ある程度大きくなると、治療はやはり手術で切除することが勧められます。

腹腔鏡下膵切除

 膵臓に対しても最近腹腔鏡(ふくくうきょう)手術が行われるようになりました。特に膵体部や尾部にできた良性腫瘍や低悪性度膵腫瘍に対して、腹腔鏡(補助)下膵体尾部切除術が行われます。膵体尾部切除というと今までは脾臓(ひぞう)もいっしょに切除していましたが、場合によっては脾臓を温存して膵臓だけ切除することも可能になりました。また膵頭十二指腸切除も腹腔鏡下で手術する試みも始まっており、今後の発展が期待されています。

チーム医療

 「からだのしくみ 病気のしくみ 治療のしくみ」連載の最後に「チーム医療」を取り上げます。

 最近、チーム医療という言葉を耳にしたり、目にしたりすることにお気づきの方も多いかと思います。言葉の持つ意味は、図のように患者さんを中心にして、医療の専門職、患者さんのご家族がともに診断、治療、ケア、予防を行っていくというイメージです。一般に、「医療に従事する多種多様なスタッフが、おのおのの高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者さんの状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されています。

 また、この図のように現代の医療はかつての医師を頂点としたピラミッド型のものでなく、各医療専門職が対等な立場で力を合わせ、「医療は患者さんのため」という当たり前の原点を実践していくことを意味しています。厚生労働省もこのチーム医療を推奨し、診療報酬に反映させてきています。その背景にはあまりにも過酷な医師の労働を本来の医師でなければできない医療に振り向けることと、少ない医療資源を効率的、協調的に生かしていくという狙いもあると言われています。それとともに、これまでの「コメディカル」「パラメディカル」という言葉(日本における造語)もなくなりつつあります。

 川崎医大川崎病院では、さまざまな分野にこのチーム医療が生かされています。皆さまとともに、さらに優れたチーム医療を実践していきたいと考えております。

      =おわり=
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月19日 更新)

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