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(6)そのままのあなたを大切にしたい 岡山済生会総合病院緩和ケア病棟臨床指導者 緩和ケアチーム専従看護師 長尾知春

緩和ケア病棟のデイルームは、季節の飾りつけを施した明るくてあたたかい空間です

緩和ケア病棟・緩和ケアチームのメンバー

長尾知春氏

 緩和ケア病棟デイルームの大きな窓から、岡山の街や山並みを展望することができます。病室から出てこられた患者さんと一緒に景色を眺めながら、ふるさとのことや、ご家族のこと、患者さんが大切に思っていることなど、お話を聴かせていただきます。

 岡山済生会総合病院緩和ケア病棟は、1998年7月7日に開設され、今年25周年を迎えます。

 実際の緩和ケア病棟がどのような場所か、ご存じの方は少ないのではないでしょうか。緩和ケアとは、「苦痛な症状を和らげるケア」と言い換えることができます。緩和ケアはがんと診断された時から始まり、症状を緩和しながら治療を行うことによって、治療効果を上げることができるといわれています。そして、がんに対する積極的な治療を終えてからも緩和ケアは継続されます。緩和ケア病棟は、進行がんのために起こる苦痛な症状に対する治療を専門的に行っている場所です。

 緩和ケア病棟に配属された看護師は専門的緩和ケアに関する知識や技術を学び、患者さんとご家族の希望を支えることを目標としています。また、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、リハビリスタッフなど多職種による話し合いを細やかに設け、チームアプローチによって患者さんとご家族の希望がかなえられるよう努めています。

 「緩和ケア病棟へ入院したら、退院できなくなるのではないか」と心配されている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。苦痛症状が和らげば、自宅への退院を考えます。再入院日を予定して、短期間の自宅療養を計画することもあります。患者さんとご家族が希望する場所で過ごせるように支援します。

 緩和ケア病棟を利用する場合には、まず主治医とご相談いただき、病院を通してご紹介いただく必要があります。次に、患者さんやご家族と面談し、今後の過ごし方について話し合います。自宅で過ごしている患者さんは緩和ケア外来へ通院していただき、症状の緩和をサポートします。

 近年、新型コロナウイルス感染症の流行によって、行動制限を求められた私たちの生活様式は激変しました。病院では感染を防ぐため厳しい面会制限が設けられ、緩和ケア病棟も例外なくその影響を受けました。患者さんとご家族が「大切な時間を過ごす場所」を提供するという緩和ケア病棟の役割が根底から覆され、病棟のあり方を日々問うた3年間だったと振り返ります。

 これからも、緩和ケア病棟の役割と機能を維持すべく対応し、安心してご利用いただける病棟であるよう努めます。

     ◇

 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 ながお・ちはる 岡山済生会看護専門学校卒業。2008年4月より岡山済生会総合病院勤務。20年4月より臨床指導者、緩和ケアチーム専従看護師。緩和ケア認定看護師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年06月05日 更新)

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