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手術ロボット使用のがん治療拡大 岡山大病院

岡山大病院産科婦人科で行ったロボットを使った手術。アームなどはビニールに包まれている。右奥が執刀医が座る作業台(同大病院提供)

 岡山大病院(岡山市北区)は、手術ロボット「ダビンチ」を用いたがん治療を拡大している。開腹手術に比べ体の切開面が小さいため出血が少なく、患者の負担を軽減できるのが特長。前立腺がんや胃がんに続き、昨秋からは子宮頸(けい)がんなどの治療も始めており、難易度が高い広汎(はん)性子宮全摘術などにも取り組む考えだ。

 2009年に国が認可したダビンチは、複雑で繊細な動きが可能なアーム3本と高性能カメラが付いた米国製ロボット。執刀医は手術台と離れた作業台に映る鮮明な3次元画像を見ながら、アームを操作してがんなどの患部を切除する。

 アームやカメラなどを患者の腹部に差し込む小さな穴を開けるだけでよく、開腹する外科手術よりも出血が少ない。全国の大規模病院で導入が進んでおり、取扱業者によると、国内には少なくとも75台があるという。

慎重に症例重ねる

 岡山大病院は10年8月、約3億2千万円で導入した。同10月には泌尿器科が前立腺がん、11年2月には消化管外科が胃がんの手術をそれぞれ始めた。前立腺がんは12年春に保険適用となったことから症例数が急増し、これまでに約90例を実施。胃がんは適用外のため手術費を病院が負担して10例を行っている。

 産科婦人科では同10月、初期子宮頸がんを患っていた40代女性患者(岡山県在住)の手術を行った。平松祐司教授が執刀し、開始から2時間半かけて、患部を取り除いた。女性は順調に回復し、5日後に退院したという。12月19日にも多発性筋腫の40代女性(同)の治療に使用した。

 平松教授は「1例目の患者は『傷が小さく、術後も楽だった』と喜んでいた。ただ、予期せぬ大出血が起こった場合にロボットの取り外しに時間がかかるというデメリットもある。慎重に症例を重ね、患者のQOL(生活の質)向上につなげたい」とする。

 産科婦人科では子宮体がんを含め、今後10例ほどの手術をダビンチで行い、治療費の一部が保険適用となる「先進医療」の施設認定を目指すという。

若手教育にも貢献

 ダビンチは医師なら誰でも執刀できるわけではなく、専用のトレーニングを積む必要がある。産科婦人科では平松教授のほかに2人が執刀可能だが、将来の保険適用と症例数の増加を見据え、今年さらに執刀医を2人増やす方針。

 さらに症例を重ねながら、岡山大病院独自の手術マニュアルを作成。手術後も尿が出るように神経を温存する広汎性子宮全摘術などにも挑戦するという。

 患部の鮮明な画像を映し出すことが可能なダビンチは、患者に“優しい”だけでなく、若手医師の教育にも貢献している。画像は執刀医が座る作業台だけでなく、大型モニターにも映し出せる。アップになった患部やアームの動きを多くの医師らが同時に見ることも可能だ。

 平松教授は「触覚がなく、視覚で縫合の糸の締まり具合を判断する必要があるなど、ダビンチを操るには経験が必要だが、うまく活用して医師のレベルアップにつなげたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月07日 更新)

タグ: がんお産岡山大学病院

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