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(2)胆のうに石 手術したほうがいいの? そのままでもいいの? 天和会松田病院理事長 松田達雄

松田達雄氏

 「そういえば昔、胆石があるといわれたことがあります。大丈夫と思って気にしてませんでした」

 外来でこのようなやりとりをさせていただくことがよくあります。当院に腹痛で受診される方の中で頻度の高い疾患の一つとして、胆石症が挙げられます。

 胆石症とは、結石ができる場所によって(1)胆のう結石(2)総胆管結石(3)肝内結石に分類されます=図1。その中でも頻度が多い胆のうに石ができる胆のう結石についてご説明します。

 胆のうに石ができる危険因子は(1)高齢(2)女性(3)肥満(4)白人(5)妊娠・出産(6)脂質異常症(7)消化管手術歴(7)ダイエット―などが挙げられます。特に大きなリスク因子としての肥満人口が増えており今後、胆石症の増加が予想されています。

 基本的に痛みなどがある有症状の胆のう結石は、手術の適応となり、当院も含め多くの病院で傷の小さい腹腔鏡(ふくくうきょう)手術=図2=で胆のう自体を摘出します。平均して術後4日で退院となり、日常生活にも比較的早く復帰できます。胆のう炎を起こした場合は、できるだけ早期に手術をすることが推奨されており、緊急入院、手術となることが少なくありません。

 では痛みのない胆石はそのまま放置してもいいのでしょうか? 無症状の胆石で症状が出るのが年2~4%程度といわれています。なので胆石がある方すべてに手術を提案するわけではなく、ガイドラインでは胆のうがんのリスクが高い症例に手術を検討するとされています。

 胆のうがんのリスクが高い胆石とは(1)3センチ以上の大きい結石(2)10ミリ以上のポリープの合併(3)陶器様の胆のう(4)胆のう壁の肥厚(5)充満結石―などが挙げられています。

 手術をせず、経過観察をする場合は、有症状化(痛くなったりすること)、急性胆のう炎の発症、胆のうがん発生のリスクを説明し、腹部超音波検査などの定期検査を行うことを推奨するとされています。

 いずれにせよ、過去に胆石を指摘されたことがある方は放置せず、一度ぜひ消化器が専門の医師の診察を受けることをお勧めします。特に腹痛等の症状がある場合は決して我慢せず病院を受診してください。

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 天和会松田病院(086―422―3550)

 まつだ・たつお 慶応大医学部卒。同大病院、がん研有明病院で腹腔鏡手術の修練を積み、米国シカゴ大学への留学を経て2018年に岡山大病院に赴任。肝胆膵(すい)外科診療を中心に従事し、20年から天和会松田病院に勤務。消化器外科専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年07月17日 更新)

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