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(5)脂肪肝 放置せず定期的に検査しましょう 天和会松田病院理事長 松田達雄

松田達雄氏

 カロリーを過剰に摂取すると、おなか周りなどに脂肪が増えるのはみなさん想像がつくと思いますが、肝臓でも中性脂肪が蓄積し脂肪肝となります。

 脂肪肝には、過度な飲酒でなるアルコール性脂肪肝と、それ以外の非アルコール性の脂肪肝があります。非アルコール性の脂肪肝は肥満や糖尿病、高脂血症などが主な原因の「非アルコール性脂肪肝疾患」NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)といい、そのうち長い経過をみても肝硬変や肝がんにならない脂肪肝(NAFL)と徐々に悪化して肝硬変、肝がんを発症してしまう脂肪肝炎(NASH)に大別されます=図1

 肥満人口の増加とともに脂肪肝(NAFLD)は増加しており、2001年に検診受診者の18%だったのに対して10年後には検診受診者の約30%がNAFLDであったと報告されています。

 脂肪肝の有無はどうすれば調べることができるでしょうか? 採血検査と腹部超音波検査を受けていただければ、脂肪肝の有無やその程度がわかります。

 脂肪肝と診断された場合の治療方法につき説明させていただきます。脂肪肝の治療は大きく分けて(1)生活習慣の改善(食事療法と運動療法)、肥満の場合は減量(2)基礎疾患の治療(糖尿病、高脂血症、高血圧など)に分けられます=図2(NAFLD/NASH2020ガイドライン治療フローチャート)。

 肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、脂肪肝になっても初期の場合は症状が出ないので、健康診断等で指摘されてもあまり気に留めていない患者さんが多いのが現状ですが、腹水や黄疸(おうだん)、むくみなどが出たときはすでに肝硬変、肝がんに進展してしまっている可能性が高いです。

 当院に紹介いただく患者さんもB型肝炎、C型肝炎からの肝細胞がんの方が減り、脂肪肝からの肝細胞がんの患者さんが徐々に増えてきています。脂肪肝は早期に発見し、生活習慣の改善、減量で治ることも多く、肥満や糖尿病、高脂血症のある方はぜひ一度、お近くの医療機関に相談してみてください。

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 天和会松田病院(086―422―3550)

 まつだ・たつお 岡山白陵高、慶応大医学部卒。慶応大病院、がん研有明病院で腹腔鏡手術の修練を積み、米国シカゴ大学への留学を経て2018年、岡山大病院に赴任。肝胆膵(すい)外科診療を中心に従事し、20年から天和会松田病院に勤務。消化器外科専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年09月19日 更新)

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