文字 

(6)膀胱がん(膀胱尿路上皮がん)について 天和会松田病院泌尿器科医長 絹川敬吾

絹川敬吾氏

 【はじめに】発生頻度は人口10万人当たり6・6人くらいであり、男女比は3~4対1と男性に多くみられ、45歳以上に多くみられる疾患です。

 【原因】特殊な染料や化学薬品などの発がん作用、遺伝子の突然変異などが認められています。また喫煙が最も重要な危険因子ですが、大部分は原因不明です。

 【症状】肉眼的血尿が最も重要な症状です。しかも無症状で自然に消失することがあります。その他、頻尿などの膀胱(ぼうこう)刺激症状や排尿障害がみられることもあります。

 【診断】

 (1)検尿沈査 肉眼的には分からなくても、顕微鏡で赤血球が検出されることがあります。

 (2)超音波検査 膀胱内に腫瘍がある場合5ミリくらいのものから確認できます。

 (3)尿細胞診 採取した尿中に、がん細胞がないかどうか顕微鏡で検査するものです。

 (4)膀胱内視鏡検査 軟性膀胱ファイバースコープを使用しますので、軽度の痛みで施行することができます。

 (5)画像検査(超音波検査、CT、MRI) 内視鏡検査で膀胱内に腫瘍が確認されれば、腎尿管への影響、膀胱壁への浸潤の有無などを画像検査で精査します。

 【治療法】膀胱がんは大きく分けて次の二つのタイプがあり、治療方法が異なります=図1

 (1)表在性(筋層非浸潤性)膀胱がん 悪性度が低く膀胱の内腔に突出した表面は乳頭状(カリフラワー様)で茎を持っています=写真1。経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR―BT)が一般的ですが、半数以上の患者さんに再発しますので定期的(3カ月ごと)に膀胱内視鏡検査が重要となります。上皮内がん(膀胱の場合、異型度が強く浸潤進行しやすく内視鏡手術では切除不可能)の場合は、BCG(弱毒化した結核菌)の膀胱内注入療法を行います。この治療法は、有効率(70~90%)は高いですが、膀胱刺激症状、発熱、感染症などの副作用もあるため慎重に行う必要があります。

 (2)筋層浸潤性膀胱がん

 悪性度が高く、腫瘍の浸潤も膀胱壁の深くまで達しており転移もしやすくなります=写真2。このため内視鏡手術で治療することが困難で膀胱全摘除術(開腹手術あるいは比較的低侵襲な腹腔(ふくくう)鏡下に行う手術)が必要となります。患者さんの希望により、放射線治療や化学療法などで膀胱を温存する治療もあります。

 【おわりに】膀胱がんは早期発見が非常に大事ですので、痛みのない血尿に気がつけばすぐに泌尿器科を受診してください。膀胱がんは再発しやすいがんですが、もし膀胱がんになったとしても決して悲観することはありませんが、楽観しすぎることも禁物です。病気を正しく理解し、医師と患者さんがお互いにじっくり話し合って治療方針を決めていくことが大事です。

     ◇

 天和会松田病院(086―422―3550)

 きぬがわ・けいご 川崎医科大学卒業。水島中央病院、吉備高原ルミエール病院、川崎医科大学衛生学講師、泌尿器科講師を経て、1998年から天和会松田病院に勤務。ICD(インフェクションコントロールドクター)認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年10月02日 更新)

ページトップへ

ページトップへ