文字 

緊急避妊薬 岡山県内入手しやすく 費用面サポート オンライン診療も

支援団体と連携し緊急避妊薬を無償提供しているみやびウロギネクリニック

 望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬(アフターピル)」を入手しやすくする動きが岡山県内で広がっている。岡山市のクリニックが今夏から無償提供をスタート。医師のオンライン診療を受けてその場で服用できる薬局も増えており、女性を守る取り組みの前進が期待される。

 「若い世代は家族に言い出せない人もいるため、1万円前後する価格は重い負担。費用面をサポートし、一人で悩まずに来院できる体制を整えたい」

 7月から24歳以下の患者を対象に緊急避妊薬の無償提供を始めたみやびウロギネクリニック(岡山市北区表町)の井上雅院長(49)が話す。

 無償提供は、性被害などで悩む女性を支援する一般社団法人ソウレッジ(静岡県)のプロジェクトの一環で中四国では初めて導入。通常通り来院し、医師の診察、服用後の副作用や体調の注意点などの説明を受けてその場で薬を飲む。診察代を含めた約1万5千円はソウレッジなどが負担。既に9件で提供したという。

被害発見やケア

 入手には価格以外にも障壁がある。婦人科受診の心理的な抵抗▽処方してくれる医療機関が近くにない▽夜間や休日に開院していない―などだ。

 これらをクリアしようとウィメンズクリニック・かみむら(同市北区本町)の上村茂仁院長(64)らが呼びかけ、2021年10月に始まったのが「おかやまアフターピルプロジェクト」。県内外の13市町にある26の薬局で上村院長らのオンライン診療を受ければ、診療費を含め9500円で入手できる。

 岡山市の3カ所で始めた当初の受診は月数件だったが、最近は50~70件まで増加。上村院長は「受診者の2割弱が10代。気軽に頼れる場所をつくることで、犯罪やDVなどの被害の発見やケアにもつながる」と説明する。

悪用される懸念

 緊急避妊薬を巡っては、医師の処方箋がなくても薬局で販売できるようにする議論が長年続いている。ただ、医師が携わらないことで避妊法の紹介などアフターケアが不十分となったり、薬が悪用されたりする懸念もあるという。

 産婦人科医の中塚幹也・岡山大大学院教授(62)=生殖医学=は「薬の認知度を上げるためにも入手のハードルを下げる動きは歓迎」としつつ「緊急避妊薬を使う事態が繰り返されてはならない。薬を飲んで終わりではなく、何かあったときに産婦人科受診につなげる仕組みも必要だ」と訴えている。

 緊急避妊薬 性交直後の服用で妊娠を防ぐ薬。避妊が十分でなかった場合などに使う。性交後72時間以内に飲めば妊娠阻止率は約80%とされ、迅速であればあるほど効果は高い。世界保健機関(WHO)は必須医薬品に指定しており、処方箋がなくても薬局で購入できるのは約90カ国・地域に上るという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年10月22日 更新)

タグ: 女性岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ