文字 

腎臓がん細胞凍らせて破壊 岡山大病院放射線科

岡山大病院が取り組んでいる腎臓がんに対する凍結療法。丸い大きな装置が治療中でも患部を確認できるIVR―CT

 岡山大病院放射線科は、細い針を患部に挿入し腎臓がん細胞を壊す凍結療法に取り組んでいる。外科手術よりも患者の身体的な負担が少なく、臓器を摘出しないため、腎機能を温存できるのが特長。2011年夏に保険適用されたが、特殊な医療機器が必要なため国内での実施は同病院や東京慈恵会医科大など5施設のみという。

 海外製の特殊な医療機器に装着した直径数ミリの細い針1〜5本を背中から、IVR―CT(コンピューター断層撮影装置)で確認した患部に向かって挿入。特殊なガスを送り込み、体内に直径数センチの氷の玉を作り、零下40度まで冷やす。冷却作業を2度繰り返し、がんに栄養を送る周囲の血管とともにがん細胞を壊す仕組み。

 岡山大病院では放射線科の郷原英夫、平木隆夫両講師ら4人が担当。4センチ以下の腎臓がんを対象に、12年5月から今年2月3日までに29人の34腫瘍に対して実施した。多くの患者の腎臓がんが消え、高い効果が表れているという。腎臓がんは遺伝的な要因が強く、再発が多いとされるが「早期発見できれば、何度でも治療が可能」と金澤右放射線科教授。

 一つの腎臓に、がんの固まりが複数あっても一度の手術で治療が可能な上、臓器を温存できるため透析治療が必要な腎不全のリスクを抑えられる。

 肺がんや肝臓がんで行われる、患部に電極針を刺して焼き切るラジオ波焼灼(しょうしゃく)術では熱が出るため、術後に痛みが発生する場合があるが、凍結療法ではほとんどないという。

 今年春からは新総合診療棟で、新たに導入した被ばくの危険性がなく、画像がより鮮明なIVR―MRI(磁気共鳴画像装置)を使った治療を開始する。金澤教授は「ハード面だけでなく、医師のスキルアップも図り、多くの患者の救命につなげたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ