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コロナ後遺症、治療長期化も 岡山大病院 対応外来開設3年

「後遺症を周囲が理解してくれないと苦しんでいる患者は多い」と話す大塚教授

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)が、新型コロナウイルス感染症の後遺症に対応する「コロナ・アフターケア外来」を開設し、15日で3年になる。受診者約900人を分析すると、倦怠(けんたい)感や頭痛といった身体的な症状に加え、精神的ストレスからうつ傾向を示す人も少なくなかった。担当する総合内科・総合診療科の大塚文男教授は「治療が長期化するケースもあり、今一度感染対策の徹底を」と警鐘を鳴らす。外来の現状や後遺症を巡る最新の研究成果を聞いた。

 ―総合病院としては国内で2番目の外来開設だった。

 日本でワクチン接種が始まる直前の2021年2月15日に診療を始めた。889人(男性412人、女性477人、24年1月末現在)のうち県内在住者が8割を超え、広島や兵庫、大阪といった近隣県からの受診もある。年齢層は働き盛りの30~50代が6割を占める一方、コロナ感染までは健康で、初めて総合病院に来たという10代の若者もいる。予約は2カ月先まで埋まっている状況だ。

 ―どのような症状を訴えているか。

 多い順に倦怠感、頭痛、睡眠障害、嗅覚障害、呼吸困難感、味覚障害、集中力低下、せき―となっており、1人につき症状が3つ以上みられた。約半数の人が半年たっても病状は改善せず、通院を余儀なくされている。長引く症状がストレスとなり、うつ傾向を示す症例があるほか、強い疲労感や脱力などで日常生活が送れなくなる「慢性疲労症候群」に後遺症から移行した人もいる。

 ―後遺症に関する基礎研究は世界中で取り組まれている。

 仕組みの一端が徐々に分かってきた。感染により、免疫機能異常や腸内環境の悪化、副腎などのホルモン分泌量が変化するなどし、後遺症になると考えられている。発症しやすい人として、女性▽肥満▽喫煙者▽基礎疾患(糖尿病、気管支ぜんそくなど)がある―といった条件も明らかになりつつある。

 ―そうした研究成果を受け、岡山大病院では診断・治療にどう臨んでいるか。

 外来開設当初は、何となく体がだるい、頭が痛いといった症状を聞き、漢方を含めさまざまな薬を処方していた。現在は積極的に臨床検査を行い、原因の特定を心がけている。例えば、味覚・嗅覚障害と倦怠感を訴える10代の女性は、通常より詳しい血液検査により、甲状腺異常の悪化が分かった。他にも自己免疫や炎症反応を調べる場合もある。

 ―今年に入り感染者は増加傾向にある。

 今冬に感染したばかりの人も外来を受診し始めている。マスクの徹底、必要に応じたワクチン接種など感染対策は重要だと改めて訴えたい。感染症法上はインフルエンザと同じ5類に移行しているとはいえ、コロナを甘く見てはいけないと、多くの後遺症患者が教えてくれている。

 後遺症について、社会の理解を進めていく必要もある。誰でもなる可能性があるのに、職場や周囲がしんどさを分かってくれないと思い悩む患者に何人も出会った。診療拠点として実績を積み重ねながら、情報発信を強化していきたい。

 コロナ後遺症 世界保健機関(WHO)は「コロナ発症から3カ月間、少なくとも2カ月間続く症状があり、他の診断では説明できない症状を指す」と定義する。日本国内では成人感染者の2割ほどに後遺症の症状が現れたとの報告がある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年02月10日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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