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鳥インフル侵入防げ 岡山県や空港など警戒強める

県環境保健センターに納入された鳥インフルエンザの検査キット

 中国でH7N9型の鳥インフルエンザ感染者が増加する中、岡山県内では海外からのウイルス侵入阻止に向け、岡山空港で入国した旅行者の体温確認を行うなど水際対策を強化。県はウイルス検出用キットや治療薬の備蓄を進め、養鶏農家は鶏舎の消毒徹底を図るなど警戒を強めている。感染経路など不明な点が多い“未知のウイルス”への備えは大丈夫なのか―。

 鳥インフルは、中国の上海を中心とする東部から北寄りの北京にも拡大。「人から人」への感染は確認されていないが、感染者は17日現在、死者16人を含め70人以上に上る。

 上海への直行便が毎日発着する岡山空港(岡山市北区日応寺)。広島検疫所岡山空港出張所は、出発する旅行者に鳥類などを売る市場に近づかないよう職員がスピーカーで呼び掛けている。

 感染すると重い肺炎になり発熱やせきを伴うため、国際線入国フロアには体温38度以上の人を赤く映し出すサーモグラフィー測定器を設置した。

 出張先の中国から17日夜帰国した高松市、会社員男性(39)は「現地では切迫感は感じなかった。感染が怖かったので、外出先から帰るたびにうがいと手の消毒を念入りにした」と話していた。

 同出張所は「感染が疑われる人がいた場合、看護師らの立ち会いで簡易検査を実施し、何としても水際で食い止める」としている。

国に要請も

 ワクチンはまだないが、厚生労働省はタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタの抗ウイルス薬4剤が治療に有効なことを確認。

 県は現在、タミフル36万人分、リレンザ2万人分を備蓄。H7N9型や人に強い感染力を示すようになった新型の流行期には放出するとともに、国の備蓄分も配るよう要請する計画だ。

 一方、県環境保健センター(岡山市南区内尾)には16日、H7N9型を含むH7系の鳥インフルエンザウイルスを検出できる検査キット(10〜40人分)が国から到着。岸本寿男所長は「万全の態勢で流行期に臨みたい」と表情を引き締めた。

死活問題

 2007年には高梁市の養鶏場でH5N1型の鳥インフルエンザが発生し、約1万2千羽が殺処分された。そのため養鶏農家は感染防止に躍起だ。

 県内最大手の採卵養鶏業・坂本産業(笠岡市走出)では、県内外約20の養鶏場全てに車両の消毒施設を設置。計約100棟の鶏舎の出入り口や窓に防鳥ネットを張り、周辺や進入路にも消石灰をまき防疫に努めている。

 従業員には専用着と長靴への着替えを義務付け、部外者の立ち入りも厳しく制限。坂本修三社長(61)は「まさに死活問題。非常時に備え予防策を強化している」と話す。

即応態勢

 県の想定では、新型が大流行した場合、全国で最大64万人が死亡。県内でも38万人が医療機関を受診し3万人が入院、死者は1万人に上る見込みだ。

 県は感染が疑われる症例が確認された場合、岡山大病院など県内4感染症指定医療機関と入院対応などについて協議することを決めており、県内の9保健所には相談窓口の開設準備を指示。189の養鶏場には異常な鶏を発見した際の早期通報を呼び掛けるなど万一の際に即応できる態勢を整えつつある。

 県健康推進課は「丁寧に手洗いを行うことが大切。渡航者で発熱などがあった場合はすぐに医療機関の受診を」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月18日 更新)

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