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(上)川崎医大川崎病院 今村明正薬剤部長に聞く

今村明正部長

 患者が薬と上手に付き合うための留意点について、川崎医大川崎病院(岡山市北区中山下)薬剤部の今村明正部長に聞いた。2回に分け紹介する。

用量用法をきちんと守る

 「1日3回朝昼夕 食後 1回1錠」といった具合に、処方薬には必ず飲み方・使い方が書いてある。これを用法用量と言う。「用法用量は定められた通りに、ちゃんと守ってください」と今村部長は最初の注意点を挙げた。

 薬の作用時間、薬の性質などによって用法用量は決まっている。24時間効くものは1日1回、12時間効くなら1日2回、8時間で体から抜ける薬は1日3回となる。飲む時間は食前、食後、食間、頓服(症状が出たら飲む)の他、食直前(食事のすぐ前)、食直後の場合もある。

 食べ物に影響を受けやすい性質を持つ薬、例えば骨粗しょう症治療剤なら胃に何も入っていない起床時に飲むよう指示される。水といっても、ミネラルウオーターで飲まない方がいい薬もある。患者の生活習慣や病状によっても、用法用量は異なる。

飲みにくい薬はつぶしても大丈夫?

 今村部長の答えは「つぶしてよい薬もあるが、駄目な場合もあります。薬剤師に相談してください」だった。

 例えば、血圧を下げる薬などでは飲む回数を減らして飲み忘れを防ぐ目的で、薬の効き目を長くする工夫(成分がゆっくりと吸収される)を施したものがある。飲みやすいからといってこれをつぶすと、薬の機能が失われ、血中薬物濃度が急上昇し、濃度が中毒域に達すると副作用が出やすくなる。

 胃では溶けず腸で溶けるように加工された潰瘍治療薬の場合、胃(酸性)では薬の効き目が無くなってしまう。

診察室での「ハイ、ハイ」

 患者は診察室で医師に対し「ハイ、ハイ」と言いがちだ。医師の話を十分に理解できていないのに、ついハイと言ってしまう。

 院内処方(医療機関内で患者が薬を受け取れる)を行っている病院で、診察後の医師から薬局に「あの患者さん、薬のこと本当に分かっておられるか確認してください」と連絡が入ることが、まれにだがあるという。

 今村部長は「分からないことはどんどん質問し、納得して薬を飲んでください。納得せず言われるままに薬を飲むと、飲み忘れが起きやすい」と注意を促した。同じ薬効の薬でも効き方はさまざま、たとえ夫婦間でも処方薬の貸し借りは厳禁だという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月20日 更新)

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