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(下)川崎医大川崎病院 今村明正薬剤部長に聞く

今村明正部長

 前回(5月20日付メディカ)に続き、患者が薬と上手に付き合うための留意点について川崎医大川崎病院(岡山市北区中山下)薬剤部の今村明正部長に聞いた。

「副作用のある薬は飲みません!?」

 このような声が患者から聞かれる。抗がん剤によって起きる悪心(おしん)・嘔吐(おうと)や脱毛、モルヒネによる便秘や眠気、抗アレルギー薬からくる眠気や喉の渇き…。薬の副作用には悪いイメージが付きまとうが、「良くないことばかりではありません」と今村部長は言い、例を挙げて説明した。

 もともと期待された作用は「主作用」で、もともと期待されていない作用で、体に不都合な作用を「副作用」と言う。解熱・鎮痛剤として処方されたアスピリンを例に取れば、痛みが取れ熱が下がるのは主作用、血液がさらさらになる作用は副作用とも言える。

 例をもう一つ。風邪薬の成分で眠気を起こすのが、鼻水や咳(せき)を止める抗ヒスタミン薬。この作用を利用して作った乗り物酔いの薬や睡眠薬もある。「利用できる副作用はうまく利用し、それが別の薬にもなっているのです」

 患者から「漢方薬は作用が穏やかだから副作用は無いだろう」との声も聞かれるが、今村部長は「種類によるが、副作用はありますよ。嘔吐、のぼせ、頻度は高くないけれど間質性肺炎という重大な副作用もあります」と語った。ビタミン剤の取り過ぎにも注意が必要、特に、脂溶性(水に溶けにくく脂に溶けやすい性質)のビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKには過剰症の副作用があるという。

貼り薬の話

 大きく分けて「局所作用型」と「全身作用型」の2種類の貼り薬がある。

 局所作用型は体のいろいろな所に貼り、局所の痛みを和らげたり炎症を抑える。全身作用型は体の1カ所に貼り、貼った部位から薬の成分が吸収され循環血流を介して全身に作用する。全身作用型には認知症治療剤の他、心臓病用、ぜんそく治療用、がん性疼痛(とうつう)用、禁煙補助用、ホルモン補充用がある。

 気を付けなければならないのは、ケトプロフェンという成分を含む局所作用型の鎮痛消炎剤。「貼った所に日光を当てない」「海水浴、ゴルフ、テニスなど戸外での活動は控える」といった注意が書いてある。紫外線に当たることで「光線過敏症」を引き起こす場合があるからだ。

 今村部長は「皮膚科医によれば、光線過敏症は頻度は高くないが起きると大変な副作用です」と強調した。貼り薬を6時間貼り続けると、剥がした後も成分が数時間は皮膚の下に残存しているという。「薬を剥がせば効果はなくなり日光に当たっても大丈夫と考えるのは誤り。まさに“落とし穴”です」

包装シートごと誤飲

 薬を包装シートごと飲み込み、喉や食道を傷つけたという事故情報が、2000年度以降の10年間で86件、国民生活センターに寄せられた。薬の包装はプラスチックにアルミなどを貼り付けた「PTP包装」が普及している。誤飲事故に遭った年齢は70歳代33・7%、80歳代26・7%、60歳代19・8%、50歳代9・3%―などだった。

 〈貧血検査のため内視鏡を飲んだところ、十二指腸球部にPTP包装が刺さっていた。取り出したが穿孔(せんこう)しており、手術した。術後はHCU(準集中治療室)へ入院〉(80歳代男性、病院からの情報)との事例もあった。

 今村部長は「過去1回だけですが、病院外来でおばあさんが家族と話をしながら薬を包装シートごと誤飲しそうになり、間一髪で止めた経験がある」と語り、注意を喚起した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月03日 更新)

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