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コンビニ、コーヒー店で院内快適に 岡山、店舗側にもメリット

岡山大病院のスターバックスコーヒー。病院内店舗の先駆け的な存在だ

豊富な品ぞろえやATMなどが好評なローソン。快適な病院づくりに一役買っている=心臓病センター榊原病院

 病院も便利で快適に-。近年、岡山県内の大規模病院にコンビニやコーヒーショップなどが入居する動きが広がっている。患者や見舞客らに心地よい空間を提供したい病院側と、店舗数拡大、確実な売り上げにつなげたいテナント側のメリットが合致。24時間営業も登場するなど、少しでも日常に近い生活を望む患者は多いとみられ、この形態はますます増えそうだ。

 「菓子や飲み物の種類も多いし、ATM(現金自動預払機)もあって便利。外に出られないので、毎日のように通っています」

 昨年9月に移転新築した心臓病センター榊原病院(岡山市北区中井町)。不整脈の手術で入院していた60代女性は、1階に入居するコンビニ「ローソン」の利便性を強調する。

 店内には従来の売店の約2倍に当たる1500種類の商品がずらり。急な入院に対応できるようパジャマや下着などの日用品を強化しているほか、糖尿病患者らに配慮した低カロリーのビスケットやコーヒーなど病院ならではの品ぞろえも豊富だ。

 売り場面積は、院外の店舗より3割ほど狭い約80平方メートルだが、小さめの棚を置くことで通路幅約1メートルを確保。車いすでも移動できるようにした。

独特のサービス

 こうした流れを岡山県内でいち早く取り入れたのは、岡山大病院(同鹿田町)だ。

 2005年、外来棟1階に「スターバックスコーヒー」が入居。全国の病院で3番目という早さだった。

 暗くて堅いイメージがある大学病院に明るさを加えようと、病院長時代に提案したのが現在の森田潔岡山大学長。「閉鎖空間で過ごす患者らが日常や、社会とのつながりを感じられる場所。スタッフの憩いの場にもなっている」とする。

 ここにも病院独特のサービスがある。メニューには他店では見られないカロリーが表示されているほか、車いすなど障害がある人たちの席には、店員が注文を取りに来てくれる。

 中庭に面したテラスを含めて計30席。少し先にはローソンもあり、この一角は、院内に現れた“街”といった雰囲気だ。

24時間営業も

 テナントにとっても病院は魅力十分のようだ。

 「店舗拡大戦略に大きく貢献している」と説明するのはローソン(東京)。「院内店舗は一定の来客数が見込め、採算が取りやすい」(同社)からだ。同社では、2000年の初出店以来、13年5月末現在で全国175店に伸びている。

 そんな中、24時間営業もお目見えした。「天満屋」とコンビニの「ポプラ」が共同経営するコンビニ型店舗で、国立病院機構岡山医療センター(同田益)に5月オープン。電気など公共料金の支払い、電子マネー決済などもでき、院外の店舗と何ら変わらない便利さが好評という。

 病院内へのテナント進出について、関西学院大の河野正道教授(地域経済学)は「質の高い医療だけでは、患者が病院を選ばなくなった。一方、コンビニなども街中では飽和状態」と分析。「病院内の出店は双方の思惑が合致したビジネスモデル。大きなデメリットは見当たらず、今後も増え続けるだろう」と推測する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月18日 更新)

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