文字 

(4)抗がん剤治療の副作用と対応策 岡山赤十字病院 がん化学療法看護認定看護師  岡本みどり

おかもと・みどり 1983年岡山赤十字病院に入り、2005年がん化学療法看護認定看護師取得後、外来化学療法室に勤務。11年から看護係長。

 抗がん剤治療は、副作用の少ない新薬の開発や副作用に対する支持療法の開発が進んだことにより、入院生活を送らなくても、外来で安全で安楽に受けることができるようになってきました。患者さんは、外来で治療を受けることで、今まで通りの家庭生活や社会生活を送ることができ、自分らしい時間を過ごすことができます。外来での治療中は、副作用による「食べられない」時の対応策が重要だと言われています。

*  *  * 

 抗がん剤の治療を始めると患者さんは症状の程度に差はありますが、「食べられない」を経験されます。食事に関する悩みは、「食欲がない」「味がない」「食べると下痢をする」「吐いてしまう」などさまざまです。

 抗がん剤治療の副作用で「食べられない」原因は吐き気のみでなく、食事に影響する症状は、食欲不振、味覚障害、便秘、下痢、口内炎などがあります。その症状は治療直後に同時に起こると思いがちですが、吐き気のように治療直後に起こるものから、味覚障害のように治療を継続していくことで起こるものもあります。また、いろいろな症状が重なっていることもあります。

 代表的な症状である吐き気は、効果の高い吐き気止めが開発されたことで軽くなってきました。いろいろな種類の吐き気止めがあり、吐き気の原因や起きた時期、程度に合った薬を選択することが大切です。食事の工夫として、「食べられる時に、食べられるものを、食べられるだけ」をモットーに、症状が落ち着いたタイミングに、少しずつ数回に分けて食べることを勧めています。食欲がない時は、食前に軽い運動をすること、外食や友達と食事をするなど楽しく食べる工夫も効果があります。

 味覚障害の時は、亜鉛を多く含んだ食品やうまみ成分であるグルタミン酸を積極的に取ることで症状が改善することがあります。また、口の中の乾燥が影響している場合も多いため、唾液の分泌が増えるように飴(あめ)をなめる、ガムを噛(か)む、昆布茶を飲む、よく噛んで食べることなどを勧めています。

 便秘になることも多いですが、治療後1〜2日排便がなければ軟便剤や下剤を飲むことで、便秘を予防できることを説明しています。食事の工夫としては、繊維質の多い食べ物や水分を多めに取ることを勧めています。

*  *  * 

 治療をしていて食べられなくなった時、「がんを治すためだ」と我慢されたり、「がんだからしかたがない」とあきらめたり、「食べられないと死んでしまうので止(や)めよう」と治療を中断したりと、患者さん一人で判断してしまうことも少なくありません。

 食べられない時の対応策の第1歩は、食事に関係する症状を医師や看護師に具体的に話し、相談することです。具体的な症状を話すことで、食べられない原因が明らかになり、症状を抑える薬を使うことができたり、食べられる工夫を一緒に考えたりできます。一口でも多く、少しでもおいしく食べられるように「食べる」を考えてみましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月01日 更新)

ページトップへ

ページトップへ