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(6)画像診断(超音波、CT、核医学、MRI) 倉敷中央病院循環器内科部長 丸尾健、医長 羽原誠二

【写真左】丸尾健部長、【同右】羽原誠二医長

心臓のCT画像

 画像診断は、循環器医療の要の一つです。当院では画像担当の循環器医師と専門技師によって高いクオリティーの画像を目指すことはもちろん、患者さんを第一に考える実臨床で役に立つ画像を目指しています。

 また、心血管は常に拍動し続けているため、従来、他の臓器と比べ画像診断では捉えにくいという問題がありました。しかし、技術の進歩はすばらしく、現在では超音波、CT(コンピューター断層撮影装置)、核医学、MRI(磁気共鳴画像装置)と多種画像診断で心臓を評価でき、多くの手法で3次元画像を構築することが可能になっています。当院では検査法に優劣、偏りなく、各手法の特徴、担当医の要望、病状、患者負担の軽減を考え適切な検査を選択することを心がけています。

心臓CT検査

 近年の画像診断技術の進歩により、CTでは今まで不可能とされていた心臓領域の検査が可能となっています。当センターでは最新鋭の高解像度マルチスライスCTを心臓血管系の検査の専用機として導入しており、冠動脈のみならず、弁膜症、心筋症、大動脈疾患などの診断にも役立てています。さらに昨今は、心臓の構造以外に、機能や血流もわかるなど、心臓CT検査から多くの情報を得ることができるようになってきました。

 心臓CT検査は心臓カテーテル検査に比べて苦痛が少なく、重篤な合併症も少ない低侵襲の検査で、心臓の病気を診断し、治療方針を決めるために有効な検査です。特に狭心症の診断においては有用で、器質的狭窄(きょうさく)病変や冠動脈石灰化の検出だけでなく、プラークの性状評価が可能であり、また、解剖学的情報を得ることができます。

 高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙といった動脈硬化の危険因子をお持ちの方、胸痛を自覚される方、心臓病の家族歴をお持ちの方には特にお勧めできる検査と言えます。

心臓超音波検査(心エコー検査)

 超音波を体に当てることで心臓を評価する手法で、通称心エコーと呼ばれています。放射線、造影剤を使用しないため人体に対する悪影響がほとんど無く、形態、動き、血液の流れ、速度と多くの情報を一度に評価できる事が特徴です。そのため、種々の疾患に対してスクリーニングから確定診断まで幅広く用いられ、当院では年間約3万5千件と画像診断の中でも飛び抜けて多くの検査を行っています。3次元経食道心エコーを導入してからは弁膜症などで精緻な3次元画像=図参照=を描出することも可能になりました。また、末梢血管に対する血管エコーは、詳細な評価が必要なため専門性の高い検査を行っています。

心臓核医学検査

 心臓に取り込まれる核種を血中に投与することで、心臓の血流、代謝、炎症を評価する検査で、SPECTとPETがあります。狭心症、心筋梗塞で心臓の血流が悪い場所はないか、心筋が生きているかを見るためには薬物負荷SPECTが主として行われ、カテーテル治療、外科手術の必要性を決定するのに不可欠な検査です。また、最近では心サルコイドーシス、大動脈炎などの診断、病状評価が可能なPETも多く行っています。

心臓MRI検査

 磁場の変化を画像化する検査で、超音波検査と同様、放射線被ばくがないため身体的負担が少ない検査です。心臓の形態、動き、さらに心筋梗塞、心筋症などで傷ついた心筋を非常に明瞭に描出できるのが特徴です。また、冠動脈狭窄、心筋血流なども評価が可能であり、末梢血管を評価するためにMRAも行っています。現在、MRIをさらに積極的に活用するために部門の連携を強化しています。

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 まるお・たけし 淳心学院高、岡山大学医学部、同大学院卒。JR東京総合病院、国立循環器病センター、岡山大学病院などを経て、2007年から現職。内科専門医、循環器専門医、超音波専門医。

 はばら・せいじ 英数学館高、広島大医学部卒。広島大医学部付属病院、広島市民病院、安佐市民病院を経て2005年倉敷中央病院循環器内科、11年から現職。日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月15日 更新)

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