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(2)前立腺肥大症 天和会松田病院泌尿器科医長 絹川敬吾

きぬがわ・けいご 白陵高(兵庫県)、川崎医大、同大学院卒。1999年4月から天和会松田病院泌尿器科に勤務。

 前立腺は男性だけに存在します。精液をつくる生殖臓器で、女性の子宮に相当する部位です。しかし子宮と比べてずいぶん小さく、その重さは約20グラムしかありません。位置的には膀胱(ぼうこう)の直下にあり尿道を囲むように存在しています=図参照。ですから前立腺が肥大してくると排尿状態が悪くなります。

症状

 尿がすぐに出ない、少ししか出ない、尿線が細く出始めてから時間がかかる(排尿困難)、尿をした後もスッキリせず残っている感じがする(残尿感)、トイレから戻ってきてもすぐに尿が出たくなる(頻尿)、とくに就寝してからトイレに行く回数が多い(夜間頻尿)、尿意があると我慢できずにもらしてしまう(切迫性尿失禁)などがみられるようになります。このような状態を放置していると肥大が進行し、尿がほとんど出なくなる(尿閉)状態が持続すると感染や腎不全などの合併症を引き起こす可能性があります。

診断

 自覚症状の程度を点数で表す採点表(国際前立腺症状スコア=IPSS、表参照)が診療の場で使われています。

 7点以下であれば軽度、8〜19点が中等度、20点以上は重度の症状と判定されます。15点以上であれば必ず泌尿器科を受診するほうがよいと考えます。また自覚症状が軽度でも泌尿器科を受診することをすすめます。

 前立腺肥大症の検査としては、直腸診、尿流量測定、超音波検査、残尿測定などが外来で行われます。

 超音波検査では前立腺の大きさを正確に測定できます。前立腺肥大症では、球形に肥大し膀胱内に突出してみえる所見です。正常の前立腺は、平たい形をしていて膀胱内にも突出していません。

治療法

◆薬物療法

・α1ブロッカー(アルファワンブロッカー)=第一選択薬で排尿障害を改善する。

・抗男性ホルモン剤=前立腺を縮小させる作用がある。

・植物エキス製剤、漢方薬=症状を緩和する対症療法薬である。

◆手術療法(当院で施行しているもの)

・経尿道的前立腺切除術=前立腺肥大症の手術の主流です。先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入して、前立腺を観察しながら切除します。

・尿道ステント留置手術=尿道にステントと呼ばれる特殊な金属でできた筒を挿入します。5分くらいで終了する安全な手術で、主に合併症があり全身状態の悪い患者さんに対して行います。

おわりに

 前立腺肥大症は、男性にとって宿命的な病気です。「おしっこに時間がかかる」「力まないと出ない」「おしっこのときに刺激がある」などの症状があると早めの泌尿器科受診をおすすめします。ほうっておくとおしっこが全くでなくなり、脂汗をかいて病院にかけこむことになりかねません。恥ずかしがらずにお気軽に受診してください。(泌尿器科専門医)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年08月19日 更新)

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