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早期食道がん、安全切除用のナイフ開発 岡山大病院講師ら

食道がんに対するESD用の新しい医療器具。先端部にみえる金属が特殊ナイフ

 岡山大病院光学医療診療部の河原祥朗講師(消化器内科)らは、食道内壁の表面に発症した早期食道がんを取り除く内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)用の特殊ナイフ(電気メス)を開発、有用性を確認した。処置時間が短縮され、安全性も向上。難易度が高く、限られた医療機関しか実施できなかった食道がんESDの普及につながる成果という。

 直径2ミリ、長さ2センチの筒状の医療器具で、先端側面に長さ2・5ミリの特殊ナイフが付く。内視鏡(直径10ミリ程度)の内部に通して患部まで届け、がんを切り取る。

 2006年から国内メーカーと開発を進め、09年から使用を開始。筒状(直径2・5ミリ)の器具に長さ1ミリのナイフを付けた従来機器による120症例と、新しい機器の52症例を比べたところ、処置時間は平均で48分から21分に短縮。誤って食道の壁に接触した際の電気ショックで起こる筋層断裂も15%から4%に減らせたという。

 食道がんESDは食道の壁が成人男性でも7~8ミリと薄く、熟練した技術が求められるが、河原講師は「少し訓練を積めば、若手の医師でも治療は可能。患者の身体的な負担が少ないこの治療法が広がるきっかけになれば」としている。

 食道がんはアルコール摂取や喫煙を続ける50歳以上の男性に多く、国内では年間約1万人が死亡。岡山大病院の新規患者は年間約150人。光学医療診療部では年間50例の食道がんESDを行っている。

 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 臓器内壁の表面だけに存在し、転移がない早期の胃、大腸、食道がんが対象。内視鏡を挿入して特殊な薬品を吹き付けて患部を特定。内視鏡の先から飛び出す特殊ナイフで切り込みを入れ、臓器内壁下の粘膜下層を切除してがんを取り除く。国内では1996年、早期胃がんの治療として始まった。処置時間が短く、身体的負担が少ない。2006年に胃がん、08年に食道がん、12年に大腸がんで保険適用になった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年08月26日 更新)

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