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がん増殖阻む化合物を特定 川崎医科大・深沢講師ら

深沢拓也講師

 川崎医科大総合外科学の深沢拓也講師(呼吸器外科)らのグループは、肺がんなどのがん細胞に多く、その増殖に必要なタンパク質「MDK」(ミッドカイン)の発現を阻害する化合物「iMDK」を特定、マウス実験で効果を確認した。有効な分子標的薬(抗がん剤)がない肺腺がんの一種をはじめ、MDKがみられる他のがんやリウマチにも効く薬剤の開発につながる可能性がある。

 肺がんの50%以上を占める肺腺がんでは、原因となる遺伝子異常の解析と分子標的薬の開発が進展。しかし、アジア人患者の15%程度、白人の30%程度が持つ遺伝子の一つ「KRas」の変異で生じる同がんに効く標的薬は開発されていない。

 グループはKRas変異による患者のがん細胞に多く、正常な細胞にはほとんどないMDKに着目。共同研究先の米シンシナティ大が新薬開発などに向けて保管する化合物4万4千種から、MDKの活性を最も抑制する1種を絞り込み、iMDKと名付けた。

 マウスの実験では、iMDKを投与しない一群(8匹)は10日間でがんの体積が6倍に増大。一方、週に3回投与した一群は1・5倍にとどまった。

 MDKは肺のほか、肝、腎、膵臓(すいぞう)や食道、胃、前立腺などのがん細胞、リウマチなど慢性疾患でも見られる。iMDKについて深沢講師は「より効果の高い分子構造への改変や他の化合物と併用した場合などを検証し、新たな分子標的薬への可能性を探りたい」としている。

 成果は米科学誌プロス・ワンに発表した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年08月28日 更新)

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