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陽性で「中絶」5.7%  新出生前診断、岡山大報告

 ダウン症などの胎児の染色体異常を血液で調べる新しい出生前診断について、岡山大が行った妊婦の意識調査の最終報告によると、検査が陽性だった場合に「中絶する」と答えた人は全体の5・7%で、6月末の中間報告の約6%とほぼ同じだった。確定診断に必要な「羊水検査などを受ける」は74%、「検査を受けず妊娠を続ける」は20・3%。同大は「今後の在り方を考える基礎資料にしてほしい」としている。

 新しい出生前診断は血液だけで簡便に行える半面、「命の選別」につながるとの指摘もあり、日本産科婦人科学会は対象を高齢妊婦らに限定。全国26病院が4月から順次、臨床研究として実施している。このうち岡山大病院は7月に開始し、今月14日現在、45組の夫婦が診断前に必須の遺伝カウンセリングを受けた。

 意識調査は、同大大学院保健学研究科の中塚幹也教授(生殖医療)らが3~6月、大阪府、広島、兵庫県内5病院に通う18~44歳の妊婦760人に実施。中間報告を経て、有効回答の557人分を集計した。

 陽性だった場合に羊水検査を受けず中絶するとした理由(複数回答)は「少しでも異常の可能性があるから」が59・4%でトップ。「(妊娠週が進んでからでは胎児が)かわいそう」が40・6%、「羊水検査は流産の可能性がある」は28・1%だった。

 同診断の仕組みについて認知度を探る質問で「採血して検査」という検査方法を知っていたのは74・9%。一方で「陽性でも羊水検査を受けなければ確定診断にならない」と理解していたのは34・5%にとどまった。陽性と判定された場合、精神的なケアを望む割合は65・1%だった。

 中塚教授は「ダウン症が陽性、イコール中絶とならないよう、専門医は遺伝カウンセリング時に正しい情報を伝えるべきだし、その後の精神的サポートが必要なことは言うまでもない」と指摘。「安易な命の選別につながらないよう、診断対象などについて議論を深め、体制を整えていくべきだ」としている。

新しい出生前診断 妊婦の血液を採取し、胎児のDNA断片を解析することでダウン症と、呼吸障害などをもたらす計3種類の染色体異常を調べる検査。確定診断には精度がほぼ100%で、妊婦のおなかに針を刺して子宮内の羊水を採取、胎児細胞を調べる羊水検査が必要。新しい出生前診断は妊娠10週から可能で、羊水検査のような流産の危険性がない。陽性の場合、胎児がダウン症の可能性は35歳以上で80~95%だが、陰性の的中率は99%以上とされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月15日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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