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(10)小児心臓病の診断・治療 倉敷中央病院小児科部長 脇研自

わき・けんじ 修道高、広島大医学部卒。中国労災病院などを経て1995年倉敷中央病院小児科勤務。2001年から現職。日本小児科学会専門医、日本小児循環器学会専門医。心房中隔欠損、動脈管開存カテーテル閉鎖認定術者。医学博士。

【図1】新生児心臓病患者の救急搬送

【図2】心房中隔欠損のカテーテル閉鎖術

 心臓病センター小児科で診る心臓病の約60%は先天性心疾患です。次いで不整脈や、心筋梗塞が問題となる川崎病が15%ずつぐらいです。頻度は多くありませんが、心筋症や心筋炎など心臓の筋肉の病気や肺高血圧などの病気があります。年齢も0歳から成人までの方々の診療に携わっています。

先天性心疾患 

 ほとんどは新生児や乳児の時に診断されます。当院には重症の呼吸循環管理の可能なNICUベッドを21床、後方支援のGCUベッドを30床保有する全国でも有数の新生児専用集中治療室があります。最近5年間の入院数は年間350〜510例(極低出生体重児=出生体重1500グラム未満=55〜80例、超低出生体重児=出生体重1000グラム未満=30〜50例)でした。NICUに入院する先天性心疾患は年間60例以上です。

 左心低形成症候群など重症先天性心疾患の児の受け入れも多く、診療圏は倉敷を中心とする岡山県南西部、広島県東部、兵庫県西部地域、時に鳥取県や島根県からも搬送依頼があります=図1参照。24時間いつでも小児循環器医が本院の救急車で迎えに行き、NICUに搬送・入院しています。遠方からはヘリコプター搬送でも受け入れています。新生児期の心臓カテーテル検査を年間10〜20例行っており、カテーテル治療も積極的に行っています。

 早期に手術が必要な症例は岡山大学心臓外科に搬送し手術していただくとともに、同大学から心疾患術後の児の受け入れも行い術後早期の管理を行っています。

カテーテル治療 

 年間120〜150件の心臓カテーテル検査を行っております。バルーンカテーテルによる血管拡張術・弁形成術やコイル塞栓術、ステント留置術、不整脈に対する高周波アブレーションなどのカテーテルによる治療の比率が多くなってきました。2012年より心房中隔欠損と動脈管開存に対するカテーテル閉鎖術の施設認定を受け、カテーテルを使って欠損孔を閉鎖する方法が可能となりました=図2参照。川崎病に対する冠動脈狭窄(きょうさく)や冠動脈瘤(りゅう)に対する治療も行っています。

 カテーテル検査やカテーテル治療を含め、小児期心疾患の診断と治療には、循環器内科や心臓血管外科の医師との連携だけではなく、看護師、臨床検査技師、放射線技師、薬剤師や臨床心理士など多くの職種の協力が必要で、それぞれの専門スタッフが協力し、チームで小児心臓病のケアに当たっています。

成人に達した 小児期心疾患 

 治療の進歩により、先天性心疾患、川崎病、心筋症など小児期に診断・治療を受けた子どもたちが成人に達してきました。先天性心疾患だけをみても、全国で成人に達した方が1997年には31万8326名、2007年には40万9101名との報告があり、既に小児科だけの問題ではなくなってきています。当院の心臓病センター内にも成人先天性心疾患外来が2008年より開設されました。また、循環器内科医、小児科医がいっしょになり、CCUや成人病棟などでの成人に達した小児期心疾患の入院治療を行っています。

 以上のように、心臓病センターの小児科は、新生児から成人期までの心疾患を、心臓病センターの循環器内科医、心臓血管外科医といっしょになって診療しています。

=おわり=
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月16日 更新)

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