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「患者と悩みを共有して歩む」 松岡良明賞受賞・猶本氏に聞く

なおもと・よしお 1978年に山口大医学部を卒業し、岡山大医学部付属病院第一外科に入局。同病院講師、同大大学院医歯薬学総合研究科准教授などを経て2010年から現職。岡山市北区天神町。61歳。

 外科医として食道がんなどの治療に尽力してきた川崎医科大(倉敷市松島)総合外科学の猶本良夫教授=同大付属川崎病院副院長=が、がん撲滅に貢献した個人、団体を顕彰する山陽新聞社会事業団の第18回「松岡良明賞」を受賞した。「患者と悩みを共有して歩む」を信念とする猶本教授に、今後の活動方針などを聞いた。

 ―消化器がんの中でも大手術となる食道がん。治療実績は。

 「1990年代に岡山大で准教授だった上川康明先生に誘われ、食道がんの道に進んで20年余り。約700例で執刀医を務めた。体の奥深い場所での作業になる上、周囲には発声に関する神経もあって難しい。無事に手術を終える『ゴール』まで無駄な動きを省き、いかに出血を少なくするかに苦心してきた」

 ―出血を抑えるための工夫は。

 「食道などはそれぞれが薄い膜に包まれ、適切な場所を切除しなければ大出血する。臓器や膜、血管の位置関係を理解し、患者さんに合った切除範囲を決める合理的なアプローチが重要。上川先生ら達人と呼ばれる方々の手術を数多く見学、卓越した技を自分の手術法に取り入れてきた」

 ―1990年代には胸腔(きょうくう)鏡治療をいち早く導入した。

 「胸腔鏡治療は、開腹手術よりも切開面が小さく、患者さんの身体的負担が少ないなどの利点があり、数十例を実施した。ただ、がんが転移しているリンパ節などが死角に入る場合もあり、どちらが患者さんに合っているかを検討した上で治療法を決めている」

 ―看護師や理学療法士らとの「チーム医療」を推進している。

 「医師だけでは病気は治せない。あらゆるスタッフと連携を深め、一緒に患者さんの治療に当たることが重要だ。患者さんには手術後にどのような痕が残り、どのような生活になるのかを事前にお伝えし、不安を取り除けるよう努めている」

 ―診療を行う際に心掛けていることは。

 「患者さんの話にできる限り耳を傾け、一緒に考えて悩み、治療方針を決めること。がんは再発することもあり、患者さんには『一生面倒を見させてくださいね』と声を掛けさせてもらっている。今後も患者さんとの信頼関係を大切にし、病気と闘っていきたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月17日 更新)

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