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(4)肩こりと肩の痛みの改善 笠岡第一病院付属診療所 健康増進クラブONE 健康運動指導士 石部豪

石部豪健康運動指導士

 「肩こり」とヒトは、ヒトが直立二足歩行を始めてからのお付き合いです。重い頭や腕を支えるため、首や肩周辺の筋肉に大きな負担がかかることで筋肉が硬くこわばり、痛みやだるさといった症状が発現するものの総称を肩こりと呼びます。

 肩こりの原因としては、パソコン操作など同じ姿勢で長時間作業したり無理な姿勢をとるなどの生活習慣や、極度の緊張やストレスといった心的要因、整形外科的疾患、内科的疾患をはじめ眼科疾患、歯科疾患、更年期障害など多岐にわたります。中年期以降においては高血圧に伴うものも発生頻度が高いです。図1のような姿勢がうまくとれないと肩に何らかの問題が考えられます。

 肩の関節はからだにある全関節の中でも最大の可動域(動く範囲)を持つ関節です。背中側にある肩甲骨と二の腕の骨である上腕骨から成る「肩関節(肩甲上腕関節)」、肩甲骨と前側にある鎖骨から成る「肩鎖関節」、胸の前面にある胸骨と鎖骨から成る「胸鎖関節」の三つの解剖学的な関節と、機能的な関節と呼ばれる肩の外側で高くもり上がった肩峰と上腕骨から成る「肩峰下関節(第2肩関節)」、肩甲骨と胸郭(背中側の肋骨(ろっこつ)の一部)から成る「肩甲胸郭関節」などの関節が連動することで肩はさまざまな動きが可能です。

 関節の可動域が大きい代わりに不安定な構造でもあるため、多くの筋肉のほかに骨と骨をつなぐ「靭帯(じんたい)」や筋肉と骨をつなぐ「腱(けん)」、肩関節を覆っている「関節包」や潤滑油の役割をする滑液で満たされた「滑液包」が複雑に入り交じって調和のとれた連動をすることで関節を安定させています。そのため、それらに負担がかかりすぎると筋肉の疲れや緊張、関節包・滑液包の炎症などが起こります。そこから、肩こり・関節の障害につながってしまいます。

 肩関節の障害は「痛み」「関節可動域制限」および「筋力低下」に基づくものが大半ですが、肩こりと同じような症状でも原因が疾患や病気の場合もあります。関節包や滑液包に何らかの原因で炎症が起こる五十肩(肩関節周囲炎)や肩甲骨と上腕骨をつなぐ腱である腱板の損傷(肩腱板損傷)があります。肩の痛みを肩こりなどと自己判断せずに医療機関を受診して正確な原因の診断を受けて、個々の病状に合わせた適切な治療を受けてください。

 疲れを蓄積しないことや姿勢に注意するなどの日常生活動作の改善も必要ですが、特に運動は有効とされています。治療を受けて治してもらうという受け身の治療ではなく、医師と相談した上で運動療法を適切な時期・負荷量・方法で日常生活の中に取り入れ、自身で治療に参加することが大切です。

 痛みの強い急性期には炎症を軽減させることが主な目的なので、痛みが強くなったり筋肉の緊張を高めるような肩関節の位置をとらないよう日常生活動作に注意します。痛みが出ない範囲で肩を動かすことから始め、徐々にその範囲を広げていきます。筋力強化の運動を行うことも関節の安定性を向上させ、動きを良くする訓練となるため、調和のとれた関節の連動をもたらします。低負荷から始めて、痛みが軽減してくれば徐々に負荷を加えていきます。そうすれば血流を改善させ、疲れや緊張が軽減してきます。

 一方、体幹の動きの悪さや筋力低下あるいは股関節の障害などが肩の動きに影響を与えている場合もあります。従って肩の改善のためには肩自体の運動だけではなく全身を動かす運動を心がけ、バランスを改善することも有効となります。

 さあ、肩の関節の健康を保ち、肩こりを解消させるため、リラックスして軽く行える運動からどんどん始めて、継続して行っていきましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年10月07日 更新)

タグ: 笠岡第一病院

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