文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 国立病院機構岡山医療センター・久保小児科医長 「成長曲線」記録しよう  子どもの心身の変調 早期発見に有効

国立病院機構岡山医療センター・久保小児科医長 「成長曲線」記録しよう  子どもの心身の変調 早期発見に有効

標準成長曲線(男子)

標準成長曲線(女子)

久保小児科医長

 子どもの身長が伸びなかったり、体重が急に増減していたら、注意が必要だ。心身の病気や親の虐待が潜んでいる可能性がある。異常な兆候の早期発見、治療などに有効なのが「成長曲線」。子どもの身長・体重を定期的に記録し、一時点では見過ごしてしまう変調をチェックできる。成長曲線の普及・啓発に努めている国立病院機構岡山医療センターの久保俊英小児科医長(46)に、内容や活用法などを聞いた。

 成長曲線は母子健康手帳に盛り込まれ、就学前までの乳幼児は定期健康診査結果などを記入できるようになっている。小学校以降では学校保健法に基づく定期健康診断があるが、同曲線をつける法規定はない。このため久保医長は、養護教諭の講演会などで成長曲線の有用性を説いている。

 同曲線は、横軸に年齢、縦軸に身長や体重の測定値を取って表したグラフ。別図の通り、全国の子どもの平均値に基づき、男女別に身長、体重各五本の「標準成長曲線」が描ける。中央の太線が平均値で、その上下二本の範囲内に全体の68・3%が、両端の範囲を入れると95・4%の人が含まれる。

 五本の線の範囲内で、同じような曲線形をしていれば問題ない。しかし範囲外にはみ出していたら、それぞれ百人中二人ほどしかいない高身長、低身長となり、病気などが疑われる。「年二回は計測値を記入し、その時々の数値を点ではなく、線で見ることが大事」

 例えば、身長の曲線が横ばいになってきたら、身長の伸びが悪いことを意味する。「低身長の一番の原因は遺伝だが、病気が隠れている場合がある」。脳腫瘍(しゅよう)や甲状腺ホルモン機能低下症、慢性腎不全などが悪影響を及ぼしているケースがあるのだ。

 骨の成長に関係している成長ホルモン、甲状腺ホルモンの分泌が悪いと、背が低くなる。脳腫瘍が脳下垂体を圧迫して成長ホルモンの出が悪くなり、低身長になったばかりか、視神経も圧迫して失明した子もいる。甲状腺ホルモン機能低下症では、成績の低下や体重増加を伴うこともある。

 身長が大人でも男性一三五センチ、女性で一二五センチほどしか伸びない軟骨異栄養症▽女児の場合、染色体異常で低身長になるターナー症候群―なども挙げられる。これらの病気は早期に発見すれば、成長ホルモン剤の注射や甲状腺ホルモンの内服薬などで身長を伸ばせる。

 逆に、早い年齢で身長が伸びていても要注意。女子に多い病気・思春期早発症の疑いがある。女子は通常、十歳ごろから胸が膨らみ、十一歳ごろから身長が大きく伸び、十二、十三歳で生理が始まってあまり伸びなくなる。ところが、六歳ごろから胸が膨らみ、十歳ぐらいで伸びが止まると、結果的に低身長になる。この場合は、二次性徴を抑える注射で治療できる。

 体重変化では、身長の伸び方に比べ体重が急増している場合は肥満が考えられる。将来、糖尿病など生活習慣病に悩まないよう、食事、運動療法が必要。反対に、減少する場合は神経性食思不振症などが懸念される。肥満、やせ過ぎなどのチェック用には、別に肥満度判定曲線もある。

 病気以外に、親の虐待や両親の離婚などによる心の問題で、身長の伸びが悪い子もいる。福祉施設に保護してストレスを取り除いたり、親が愛情を注ぐことで、再び伸び始めるという。

 久保医長は「成長曲線で子どもの心身の健康状態が分かる。学校で気になる子は養護教諭が作成し、学校医が保護者によく説明してほしい。新生活の始まりを機に、子どもの異変を見逃さないよう家庭でもグラフをつけよう」と話している。

 成長曲線の問い合わせは、各学校の養護教諭か岡山医療センター(086―294―9911)の久保医長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年04月12日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ