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(6)プラス・テンでアクティブな生活 笠岡第一病院付属診療所 健康増進クラブONE 健康運動指導士 石部豪

石部豪健康運動指導士

 今年4月に厚生労働省から健康づくりのための身体活動指針「アクティブガイド」が発表されました。身体活動量の減少(運動不足)は、さまざまな疾患の予防・対策に影響するだけではなく、喫煙、高血圧に次ぐ間接的な死因に挙げられています。運動不足が生命の危険に影響する切実な問題だということです。

 1964年に開催された東京オリンピックを記念して設けられた「体育の日」に合わせて今年10月、文部科学省から平成24年度体力・運動能力調査の結果が発表されました。男女ともに50歳代以上の体力・運動能力は向上しており70歳代以上は過去最高を記録しています。地域のスポーツ同好会やフィットネスジムなどのスポーツクラブに所属している成人の割合は年齢が上がるほど増え、70歳代で40%前後となることも分かりました。

 一方、小中高校生の記録は一時期に比べると向上していますが、1985年頃のピーク時の水準には達していません。2020年の東京オリンピックに向け、子どものうちから運動をする機運を高める必要がありそうです。さらに、子どもの時期に活発な身体活動を行うことは、成長・発達に必要な体力を高めることはもとより、他者との遊びの中で知力や精神力の向上の基礎ともなります。体力調査で好成績の秋田県や福井県は、全国学力調査でも好成績を残しています。体力と生活習慣や学力の関係を意識して、将来の生活習慣病などにつながらない生活習慣を子どもの時期から身につける必要があります。

 2006年の流行語にもなったメタボリックシンドローム(以下、メタボ)は今や認知度は90%以上で、誰もが一度は耳にしたことがあると思います。代謝症候群、内臓脂肪症候群ともいわれ、肥満(特に内臓脂肪の蓄積)に高血圧、耐糖能異常(高血糖)、脂質異常のうち二つ以上が重なった状態をいい、虚血性心疾患や脳血管疾患などの重い生活習慣病に陥るリスクが高いことに警告を発したものです。体格指数(BMI)が25以上で肥満と判定される人や、ウエストサイズが内臓脂肪型の可能性を示す男性で85センチ、女性で90センチ以上である人は、医療機関を受診して健康障害がないかを専門の医師に相談してみてください。

 2008年から“メタボ健診”とも呼ばれる特定健診・特定保健指導が行われ、健康政策が実施されています。男性50・2%、女性17・6%でメタボが強く疑われるか予備群であるというデータもあります(平成23年度厚生労働省)。からだにいったんついてしまった脂肪(体脂肪)を運動だけで減らすのはかなり難しく、たとえば体脂肪1キロ(7000キロカロリー)を減らすには、ウオーキング(体重60キロの方で1時間に約190キロカロリーを消費)を37時間も続けなければなりません。

 ところが、生活習慣で活発な身体活動を行うことで運動そのものによるエネルギー消費に加え、筋肉がつくため基礎代謝量も増加します。さらには、腰の痛みや肩の痛みなどの疾患対策においても、からだを動かすことでのリラックス効果、痛みに対する不安や恐れ、ストレスを軽減させる運動療法が有効となります。

 最初に述べた「アクティブガイド」の中でもプラス・テンをスローガンに“今より10分多くからだを動かす”ため、「階段を使う」「歩幅を広くする」「ながら体操」=図参照=など、毎日をアクティブに暮らすヒントが示されています。この機会に、一日の生活を振り返ってみましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月04日 更新)

タグ: 健康笠岡第一病院

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