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心の病気、偏見なくしたい 岡山で活動続け10年目

中学生を前に自らの体験を話す男性(左)=岡山市北区谷万成、万成病院

 統合失調症や、うつ病などを抱える人たちの団体「スピーカーズ・ビューロー岡山」(事務局・岡山市中区古京町)。悩みを打ち明け、語り合うとともに、自ら体験を話して、世の中の偏見を取り除こうという活動は今年10月、10年目に突入した。資金難から運営は厳しさを増すが、団体は当事者の救いの場所となっている。

 「6回入退院を繰り返した。病院の中に閉じ込められている感じで、つらかった」

 8日の万成病院(岡山市北区谷万成)。会員の男性(82)=同市=は、市立京山中(同市北区津島京町)と同病院多機能型事業所が連携して開く「こころの病気を学ぶ授業」で、2年生約270人に自らの体験を語り始めた。

 清水さんは銀行員だった26歳の時、統合失調症を発病。他人の何でもない言葉や態度を自分に関連づける「関係妄想」と診断された。周囲で人が話していると自分の悪口だと感じたり、誰かが盗聴器を仕掛けて自分を監視していると思い込んでしまい、不安な毎日が続いたという。

 「(当時は)社会の偏見が今以上に強かったが、希望だけは見失わないように生きてきた」。淡々と打ち明ける清水さんの言葉に生徒たちは聞き入った。

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 団体の発足は2004年10月。きっかけは、前年まで3年間行われた厚生労働省の研究事業だった。民生委員と精神障害者が、体験談や実生活上の問題を直接話し合い、その前後の印象の変化を調べたところ、従来の講義中心の研修よりも、偏見を取り除く効果が大きいことが分かった。

 研究で集まった当事者18人で会を設立。「実名で自分の悩みを訴え、周囲と分かち合う画期的な取り組みだった」と、設立時から運営に携わった本田圭子さんは話す。

 現在、20~80代の男女60人が活動を展開している。2007年からは、同じ体験をした人が別の当事者を支える「ピア・サポート事業」もスタート。昨年までに体験発表は338回、ピアサポートは242回に上った。

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 活動が活発化する半面、団体を取り巻く経済的な環境は厳しさを増している。収入は会員の年間千円の会費と、ピアサポート事業に伴う県からの委託金のみ。メンバーが講演に行った際の謝礼の一部も寄付してもらっているが、インターネット回線すら引けない状況だ。仕事に就けないメンバーもおり、交流会などにかかる交通費は団体が支給。翌年に繰り越せる費用は10万円未満という。

 100人に1人の割合で発症するとされる精神疾患。長い入院生活を送ったあるメンバーは「自分のことを50回打ち明けたら、将来のことを考えられるようになった」と語り、本田さんは「語ることで和らぐ気持ちもある」という。

 自身も統合失調症の関常夫会長は「生の声を社会へ発信し続け、心の病気でつらい思いをする人たちを少しでも減らしたい」と話している。スピーカーズは個人からの寄付も募っている。問い合わせは事務局(086―225―0873)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月20日 更新)

タグ: 万成病院

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