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早期発見で拡大防止 1日、世界エイズデー

県エイズ医療等推進協議会の和田秀穂会長

 岡山県内のHIV(エイズウイルス)感染者とエイズの新規患者が、2007年から7年連続で計10人以上となる一方で、検査件数は低迷し、感染のさらなる拡大が懸念される。今年はHIVが初めて特定されて30年。1日の「世界エイズデー」に合わせ、県が本年度、新たに発足させた「県エイズ医療等推進協議会」の和田秀穂会長(川崎医科大血液内科学教授)に対策と課題を聞いた。

 ―県内の現状は。

 2000年に入ってから感染者、患者とも増え、10年には計22人と過去最多になった。発症した状態で感染が判明する「いきなりエイズ」が半数を占め、その数は同年、人口10万人当たりで全国4位だった。その後こうした新規患者は減っているが、感染者と合わせると依然多い。

 ―医療体制は整っているか。

 1994年、県内の医療関係者で岡山HIV診療ネットワークを立ち上げ、施設間の連携や診療レベルの向上に努めてきた。エイズ治療の拠点病院も10カ所整備され、医療水準は高い。早い段階で感染が分かれば薬でウイルスを抑え、発症を防げる。治療しながら仕事を続けるなど社会生活を送っている人も少なくない。早期発見・治療が重要だ。

 ―保健所と病院での検査は08年の1474件をピークに減少か横ばいだ。先日は、HIV感染者の献血血液が日赤の安全検査をすり抜けて輸血され、感染する事態が発覚した。これは検査目的の献血だった可能性がある。

 献血だと心理的な敷居が低いためとみられるが、病院や保健所の検査は今、非常に簡便で、嫌な思いをすることもない。積極的に受診してもらおうと県は本年度、拠点病院での検査費を一律千円にしたほか、検査場所や日時を記したカードを7千枚作り、トイレなど手に取りやすい場所に置いている。感染者・患者が20~40代に多いため企業訪問も始めた。今月6日には社員の健康管理を担う産業看護職向けの研修会も初めて開く予定だ。

 ―今後の課題は。

 国の調査によると、HIV感染者は同性間の性的接触によるものが7割超を占める。男性同士の性行為ではコンドームを使わなかったり、出血しやすいことから感染リスクが高いとされる。男性間の性感染症予防を啓発している団体から話を聞くなどし、効果的な啓発方法を考えたい。

 ―検査の重要性が社会的にまだ認識されていない。

 日本は検査を受けている人の割合が全人口の2%程度とされ、判明している感染者は氷山の一角だ。早期発見・治療を促すことでパートナーらへの新たな感染を防ぐことができる。早期の検査受診が一番の予防につながることを広く知ってもらいたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年12月01日 更新)

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