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中四国初の心臓移植、岡山大病院 脳死男子から10代女性へ

初の心臓移植手術を終え、記者会見する佐野俊二教授(右)

 中四国地方で初めてとなる心臓移植手術が7日、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で行われた。佐野俊二心臓血管外科教授の執刀で、長崎県の病院で脳死と判定された10歳以上15歳未満の男子の心臓を拡張型心筋症の10代女性患者=中国地方在住=に移植。手術開始から約3時間20分後に無事終了した。患者の容体は安定しており、2~3カ月で退院できるという。

 術後に会見した佐野教授は「ドナー(臓器提供者)の男の子から提供してもらった心臓は状態も良く、スムーズに手術できた」とし、女性と面会した家族については「両親は涙ぐみ、妹さんは万歳をして喜んでいた」と述べた。

 手術は午前8時35分に始まった。提供された臓器は同9時ごろ、岡山空港を経由してヘリコプターで岡山大病院に到着。患者の心臓を摘出した後、臓器を移植して血流を再開させ、同11時57分に終了した。

 患者は2010年、心臓の筋肉が伸びてポンプ機能が落ちてしまう拡張型心筋症と診断された。移植以外に救命法はなく、11年に日本臓器移植ネットワークに登録していた。

 ドナーは長崎医療センター(長崎県大村市)に心肺停止による低酸素脳症で入院、6日に脳死と判定された。10年の臓器移植法改正で、本人が拒否していなければ家族の承諾で脳死判定と臓器提供が可能となり、15歳以上という年齢制限も撤廃された。

 15歳未満の脳死判定は国内4例目。岡山大病院の患者が15歳未満の子どもから脳死臓器の提供を受けるのは初めて。


技術の高さ示す
佐野教授「実績重ね拠点に」

 肺は国内最多の119例、肝臓は320例など数々の移植を実施し、日本の移植医療をリードする岡山大病院。心臓移植は2010年7月に中四国地方で唯一の実施施設となって3年余りで実現した。佐野俊二教授は「実績を重ね、中四国の拠点病院となれるよう努めたい」と第一歩を喜んだ。

 チームは執刀医の佐野教授、ドナーの心臓を摘出した笠原真悟准教授、移植コーディネーターを含めた30人。手術の予定時間は6時間だったが、約3時間20分で終了。執刀医らの技術の高さと「移植センター」としての経験、機能の高さを示した。

 患者は3年前から入院し、我慢強く順番を待っていたという。佐野教授は「状態が悪化した時期もあり、手術を無事に終えられ、感慨深い」と述べた。

 今回の移植の意義は、若い命を救うだけではない。心臓に重い病気を抱える中四国の患者は実績のなかった岡山大病院ではなく、大阪や東京などの病院に入通院して待機することが多いという。病院が遠方になれば患者本人や家族の経済的、精神的な負担も大きくなる。

 佐野教授は「患者さんが無事に退院して初めて成功と言える。心臓移植の面でも地域の拠点病院として認識してもらえるよう、万全の体制で免疫抑制などの術後管理を行っていきたい」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年12月08日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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