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胎児の救命率高い手術成功 川崎病院で岡山県内初

県内で初めて行われた胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(川崎病院提供)

 川崎医科大付属川崎病院(岡山市北区中山下)は15日、胎内の一卵性双生児が胎盤を共有、複数の血管でつながることで、血流のバランスが悪くなる「双胎間輸血症候群(TTTS)」の妊婦に対し、内視鏡で血管を確認しながらレーザーで焼き固める手術を行い、成功した。県内の医療機関では初めて。患者の容体は安定しており、2週間後には退院できる見通し。

 手術は、米国で1990年代に始まり、世界十数カ国で行われている「胎児鏡下胎盤吻合(ふんごう)血管レーザー凝固術」。胎児の救命率の高さから注目を集め、国内では2002年から始まった。だが、執刀できる医師は少なく、国内では7病院、中国、四国、九州地方では川崎病院でしか実施できないという。

 同病院では15日午後、鳥取県在住の30代女性に対し、産婦人科の中田雅彦部長が執刀。麻酔後に患者の腹部から専用の内視鏡「胎児鏡」(直径3・5ミリ)を子宮内に挿入。胎盤を観察し、つながっている血管14本を確認、レーザー光線を照射して全てを凝固させた。手術時間は約40分間だった。

 中田部長は山口大医学部付属病院などで300例以上の症例を重ね、昨年7月から川崎病院に勤務。最大のメリットは胎児の救命率の高さで、従来の治療法による救命率は「少なくとも1人だけ」が50~60%だが、今回の技術を使えば「少なくとも1人」は90%、「2人とも」は70%と、救命率が大幅に上がるという。

 治療を受けた女性は「近くの病院で手術でき、負担が減った。出産予定は6月で先は長いが、先生から順調と聞き、ひと安心」と話していた。

 中田部長は「早期に診断し、重症化する前に治療できれば有効性も高まる。できるだけ早く専門医を受診してほしい。この治療を岡山で普及させ、胎児診断、治療の拠点病院となれるよう努力したい」としている。

 双胎間輸血症候群 双子が一つの受精卵から分かれる一卵性双生児の場合に起こる疾患。分かれる時期が遅かった場合、双子は一つの胎盤を共有するだけでなく、複数の血管でつながり、血液を送り合う。このため、血流のバランスが崩れてしまい、双方の成育に影響を及ぼすという。発症割合は一卵性双生児の7~8%。血液を送る側(供血児)は羊水が少なくなって腎不全などを起こすほか、受け取る側(受血児)は羊水過多で心不全などになる。重症化すると2人とも死亡してしまう場合もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年01月17日 更新)

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