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「硬膜動静脈瘻」液体物質で新塞栓術 岡山大病院、医師主導治験へ

 血管の異常で動脈と静脈が直接つながっていて、脳出血などを起こすこともある病気「硬膜動静脈瘻(ろう)」のカテーテル治療で、接合部分の穴をふさぐため、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は国内3医療施設と共同で、液体物質を使う新たな塞栓術の医師主導治験を来週にも始める。

 くも膜下出血などの原因となる「脳動静脈奇形」の治療で、既に使われている医療用プラスチックを溶かした液体物質を利用。血液と混ざることでゆっくりと固まる性質がある。足の付け根から動脈を通して脳内に挿入したカテーテル(細い管)で注入すると、接合部分の穴の形に合わせて固まり、ふさぐことができるという。

 従来は金属の糸を丸めたコイル塞栓術や液体接着剤を使う方法が主流だった。ただ、コイルでは細くなっていたり、曲がっている場合にうまくふさげなかったり、接着剤ではカテーテルに付着する恐れがあって取り扱いが難しかった。

 2015年12月までに岡山大病院のほか、神戸市立医療センター中央市民病院、名古屋大病院、富山大病院で計22例を治療し、効果や安全性を評価する。

 岡山大病院脳神経外科・IVRセンターの杉生憲志准教授は「硬膜動静脈瘻は多様な病態があり治療が難しい。新しい塞栓物質ならより高い安全性、有効性が期待できる」と話している。

 医師主導治験は、採算性などを理由に企業が行っていない薬や医療機器の治験を医師が主体的に進め、臨床現場への早期導入を目指す。


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 硬膜動静脈瘻 脳の表面を覆う硬膜上で動脈と静脈が毛細血管を介さず、直接つながる病気。圧力の高い動脈から低い静脈に血液が流入することで、血流が悪くなる。目の奥や後頭部などに生じやすい。自覚症状は耳鳴りや目の充血、眼球の突出など。最悪の場合、失明や脳出血につながることもある。発症率は年間10万人あたり0.3人程度。岡山大病院では年間20〜30人が治療を受けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年04月13日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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