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食道がん手術で高い成果 川崎医科大、5年生存率7割超

食道がん手術を受け、退院を前に主治医らと話す患者の女性=3月中旬、川崎医科大付属病院

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)が食道がんの手術で成果を挙げている。通常は首、胸、腹の3カ所にメスを入れるが、できるだけ胸を開かないため、患者の体への負担が少ないのが最大の特徴。積極的なチーム医療で術前・術後の管理にも力を入れ、術後の5年生存率は7割(全国平均54%)を超え、全国トップクラスを誇る。

 「手術ができてよかった。まだまだやりたいことがたくさんあるからなぁ」。3月中旬、県内の女性(87)が病室でうれしそうに話した。高齢になると体力が落ち、外科手術は敬遠しがちだが、女性は体への負担が少ない方法で2週間前に手術を受けた。

 食道は体の中心にあり、心臓や肺、大動脈などに囲まれているため手術が難しいとされる。早期発見できれば内視鏡を使って切除が可能だが、進行している場合は首、胸、腹の3カ所にメスを入れ、がんやリンパ節を摘出した後で、胃などをつなぐ手術を行うのが一般的だ。

 しかし、同病院では開胸はせず、腹から横隔膜を切って、がんなどの部位を取り除く。「胸にメスを入れるより横隔膜を切る方が体の負担は少ない」という。手術時間も約4時間で、従来より2時間程度短縮。開胸の必要がある場合も、より切開面が小さくてすむ胸腔鏡(きょうくうきょう)を導入するなど工夫している。

 こうした傷をできるだけ小さくする低侵襲手術などは、合併症やがんの転移を抑制するといい、10%程度とされる術後の肺炎、縫合不全といった合併症も5%以下。2003~12年に手術した61人の5年生存率は71・5%となっている。

 医師、看護師、栄養士らが連携したチーム医療による術前・術後の栄養管理やリハビリなどの支持療法も充実させた。手術の約2週間前から入院し、脂肪酸(魚油)を多く含む経腸栄養剤を摂取してもらうことで、炎症を引き起こす化学物質サイトカインを抑制する効果が期待できる。術後も体力トレーニングなどで体調管理を徹底する。

 消化器外科部長の平井敏弘教授は「体への負担が少ない方法と栄養サポートなどを取り入れれば、高齢でも手術は可能。低侵襲手術ができる人材育成にも努めたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年04月17日 更新)

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