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美味(おい)しく食べて健康長寿になろう おおもと病院 管理栄養士 宮本慶子

みやもと・けいこ 就実高、美作大短期大学部卒。2010年おおもと病院に入り、12年4月から主任管理栄養士。

 現在、日本だけでなく全世界で高齢化が進んでいます。そんな中で人々は健康で長生きすることを望んでいます。しかし健康寿命と平均寿命の間には男女ともに10歳程度の差があり、問題視されています。では、健康寿命を延ばすにはどうすれば良いのでしょうか?

 人間にはライフサイクルがあり、誕生して乳児期、幼児期、学童期、青年期、成人期、老年期を経て死へ向かいます。この間、心や身体は変化し、年齢や周りの環境により異なります。健康の基本はライフスタイルと食事です。「We are what we eat(私たちは食べ物によって出来ている)」。つまり、身体に悪いことはやめ、食べるべき物、体に良い物(必要な物)を摂(と)ることが第一です。

 健康度を下げる主な原因は、食事摂取量・栄養量の習慣的な過剰または不足です。生活習慣病予防の目的で策定されている厚生労働省「日本人の食事摂取基準」で、健康障害を生じるリスクが示されています。

 栄養の内容についてはどうでしょうか。栄養は人間の生存、健康の維持・増進に不可欠なものです。中でも約50種類もの必須栄養素は食事から摂取しなければなりません。これらは互いに関連し合い作用し、どの必須栄養素が欠けても代謝機能は低下します。代謝機能をつかさどる3千種類の酵素はタンパク質(アミノ酸)と無機質から作られています。それらの機能のスイッチ役としてビタミンも必要です。優先順位はなく、全てが鎖のように絡み合っています。一つの必須栄養素を大量に摂取しても効果はありません。

 健康度を上げるには、まず必須栄養素を満遍なく含む食材を食べましょう。小魚、小エビ、海藻、豆類、旬の野菜やキノコ、種実類等の生命を感じる食材を使うことが大事です。次に食べた時の充実感や美味しさを感じることです。旬を楽しむ、素材の味を楽しむことで、身体に不必要なものは欲しくなくなります。濃い味付けも必要ありません。加工食品を使用する場合は食材をイメージし、適量を心がけ、不自然さを感じた場合は口にしないことです。また、朝食8時、昼食12時、夕食18時と規則正しい食事をします。次の食事前におなかのすく量が適量です。

 ライフスタイルについては、ストレスが要注意。ホメオスタシス(身体を一定に保つ機能)を狂わせます。コレステロールとビタミンC、良質のタンパク質、抗酸化作用のあるビタミンEの摂取を心がけましょう。睡眠不足や不規則な食事も生体リズムを狂わせます。

 美味しい健康食とは、ゆっくり食事を楽しむこと。旬を取り入れ、五味(甘・酸・塩・苦・辛)を取り入れることにより、五感(視・聴・味・臭・触)が働き、身体機能がフルに活動します。よい刺激が身体に与えられ、免疫機能もアップします。食事バランスについては、五色(赤・黄・緑・白・黒)の食材がお勧めです。薬膳の考え方ですが、見た目にも楽しく、いろいろな栄養素を摂取できます。よく噛(か)んで食べることも大切です。胃腸の健康にもつながり、腸内環境を整え、脳を活性化し、口腔(こうくう)内の衛生状態もよくなります。

 健康長寿への近道はありません。毎日の食事の積み重ねが重要です。健康も病気も台所からつくられると言っても過言ではありません。食事の善しあしの影響は数年後、数十年後に必ず現れます。自主健康管理を行い健康長寿になれるよう、今日から始めましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年05月05日 更新)

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