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進歩する脳梗塞治療 急がれる専門医育成

 脳梗塞の急性期治療が着実に進歩を遂げている。原因である血栓(血の塊)を薬剤で溶解する治療に加え、カテーテルと呼ばれる細い管を使って血栓を回収する脳血管内治療が次々に登場。カテーテルでステント(網目状の金属)を血管内に入れ、血栓を回収する新型器具の保険適用が今月始まった。救命率向上や後遺症の軽減が期待されるだけに、専門医育成など体制整備が急がれる。

 脳梗塞は全国で毎年約20万人が発症、7万人以上が死亡する“国民病”だが、最も効果が高いとされるのが血栓溶解薬「tPA」。点滴で治療でき、2005年に保険適用となった。救命率の向上に大きく寄与し、岡山県内では川崎医科大付属病院が国内屈指の実績を誇る。

 tPA投与はしびれやまひなどの発症後4時間半以内に限られ、対象は全患者の3〜5%程度。また動脈など太い血管には効きにくい。脳血管内治療の国内第一人者の吉村紳一兵庫医科大教授は「脳梗塞は治療が30分遅れると死亡率が1・2倍になる。tPA投与を迅速に行った上で、次の選択肢としてカテーテルを使った治療を視野に入れるべきだ」と説明する。

 カテーテルでの脳血管内治療は発症後8時間まで可能。特殊な器具を備えたカテーテルを脚の付け根の血管から患部まで挿入し、血栓を回収するというもので、器具は大きく3タイプに分かれる。

 このうち、らせん状のワイヤ器具で血栓を回収する「コイル型」は10年に、ポンプにつないだ太いカテーテルで血栓を取り除く「吸引システム」は11年に保険適用。いずれも血管を傷つけるリスクを伴うが、身体的負担が少ないのが特長だ。

 もう一つは、ステントを患部で広げ血栓をからめとる「ステント型」。12年に米国で医療機器として承認されるなど欧米で脳梗塞治療の主流になりつつある。

 一方、脳血管内治療は医師に高度な技術が求められ、日本脳神経血管内治療学会などは専門医の認定制度を設けるが、全国で13年末現在839人。県内で専門医がいる医療機関は岡山大病院、岡山赤十字病院、倉敷中央病院、川崎医科大付属病院などに限られる。

 指導医でもある岡山大病院脳神経外科・IVRセンターの杉生憲志准教授は「専門医の育成とともに、患者を迅速に専門医の元へ送れるよう医療機関同士や救急隊との連携が欠かせない」と指摘している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年07月11日 更新)

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