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(5)肥満 岡山ろうさい病院 女性のための総合外来担当医師 田端りか

田端りか医師

 肥満と生活習慣病は密接な関連があります。特に内臓脂肪型肥満は脂肪細胞から放出されるホルモンを介して生活習慣病を引き起こします。

 女性において、年齢とともに体重や体脂肪率が変化するのは生理学的な変化としての結果で、思春期以降女性は男性よりも体脂肪率が高くなります。体脂肪量が一定の割合に達しないと卵巣が正常に機能しません。出産には、ある程度の脂肪蓄積が必要であり、体脂肪が少なすぎると女性ホルモンの働きが鈍くなり、骨折しやすくなります。従って、女性のある時期の体脂肪増加は病的肥満とは異なります。近年の若い女性のスリム指向はやせすぎの範疇(はんちゅう)に入り、将来種々の栄養学的問題を残すことになります。加齢に伴うホルモン環境の変化とともに下肢の脂肪が減少し、内臓脂肪が緩徐に、閉経後は急速に増加し、内臓脂肪型肥満をきたすことになると、生活習慣病と関連しますので治療の対象になります。

 主婦の肥満調査の結果から、ホルモン環境以外に種々の社会的環境要因の影響を受けて肥満が形成されることがわかってきています。過食と運動不足による肥満は男女とも内臓脂肪の蓄積となって現れますが、更年期以前には食生活の乱れや運動不足などの社会的要因が存在し、更年期以降、エネルギーの必要量が減少するための相対的過食により内臓脂肪型肥満をもたらすと考えられます。

 肥満治療を検討する場合、本当に病的肥満であるかをまず検討する必要があります。まれに他の疾患の随伴症状である症候性肥満があることがあります。また、内臓脂肪ではなくとも関節疾患、睡眠時無呼吸症候群、月経異常等をきたす場合も治療の対象となります。

 肥満症の治療は、食事療法、運動療法の組み合わせと、減量成功とリバウンド防止のための行動療法が必要となります。初めに減量目標を設定し、一日摂取エネルギー量を求めます。食事の基本は摂取エネルギーの制限です。それを踏まえて、日常の身体の活動性を高めるような運動で内臓脂肪の減少を目標にします。日常生活の中で肥満となる要因や行動を明らかにし、減量治療の補助に行動療法を用います。

◇ 岡山ろうさい病院((電)086―262―0131)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月18日 更新)

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