文字 

デング熱、発熱後に発疹 川崎医大・尾内教授に聞く

尾内一信教授

 国内での感染が相次ぎ確認されたデング熱。岡山県でも東京・代々木公園に立ち寄り、倉敷市に帰省した男子学生の感染が判明した。ウイルスを持つ蚊は、国内では岡山、広島を含め青森以南に生息するといわれる。日本渡航医学会副理事長で川崎医科大の尾内一信教授(59)=小児感染症=に症状や留意点を聞いた。

 ―どのような症状が現れ、治療法はあるか。

 38度以上の急な発熱や筋肉・関節痛、寒気などがあり、発熱から数日たって発疹が出るのが特徴。治療は解熱や水分補給といった対症療法が中心だ。特に高熱時は脱水症への注意が必要となる。重症化することはまれ。過度に恐れる必要はないが、ウイルスには四つの型があり、2度目に最初と異なる型に感染した場合、重症化しやすいといわれる。

 ―国内での感染例は約70年ぶりといわれる。

 昨年、日本を旅行した外国人がデング熱に感染した疑いが強いとの報告があり、以前から国内で感染者がいた可能性は否定できない。一方、海外で感染し、国内で発症する人は毎年約200人に上る。感染例の多い東南アジアなどへ渡航し、症状を訴えた人にしかデングウイルスの検査は行われておらず、実際の患者数はもっと膨らむはずだ。

 ―患者は東京を中心に各地で確認されている。

 感染が広まった理由の一つは、発生場所が「都会」だったためだ。代々木公園は不特定多数の人々が出入りする憩いの空間。緑が多く、水場もあるなど蚊が繁殖しやすい環境が整っており、感染が急速に拡大したのだろう。ただ、人から人には直接は感染しない。蚊は冬を越えて生息できず、ウイルスは次世代に引き継がないと考えられており、徐々に終息に向かうだろう。

 ―予防法はあるか。

 予防ワクチンや抗ウイルス薬の開発が進んではいるが、まだ承認されたものはない。日本を訪れる外国人は年間1千万人を超え、日本からは2千万人近くが海外を訪問する時代であり、ウイルスの“渡航”は避けられない。なるべく刺されないことが一番の予防であり、長袖、長ズボンの着用のほか、市販されているスプレータイプの虫よけなどを活用してほしい。

デング熱 デングウイルスが原因の感染症。ネッタイシマカやヒトスジシマカがウイルスを媒介する。世界で年間5千万~1億人が感染すると推定される。東南アジアや中南米で感染例が多く、中国や台湾、欧州でも報告がある。ほとんどは発症から1週間程度で回復する。発症者の1~5%は重症化してデング出血熱やショック症候群を引き起こすこともある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年09月06日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ