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(2)網膜静脈閉塞症 倉敷成人病センター眼科部長 岡野内俊雄

網膜中心静脈閉塞症(左)、網膜静脈分枝閉塞症

 物を見るときに映像が投影される場所(眼底の網膜)が正常に機能していくためには、網膜の内層を養っている網膜血管による血流が重要です。血流を構成する静脈が、視神経内から網膜のいずれかで閉塞(へいそく)し、その灌流(かんりゅう)領域の網膜に出血や浮腫を生じるのが網膜静脈閉塞症です。閉塞の部位によって、網膜静脈分枝閉塞症と網膜中心静脈閉塞症に分けられますが、閉塞した部位より末梢(まっしょう)側(網膜の周辺側)の血流障害を生じるので、後者の方がより重症となります。中高年で発症する場合は、基礎疾患として動脈硬化や高血圧を有することが多い病気です。

網膜静脈分枝閉塞症

 図aのように動脈と静脈の交叉する部位で血栓が生じて閉塞します。視野の異常をきたし、黄斑という視力に関わる領域を含むと、視力低下や物が歪んで見える(変視症)などの症状が出ます。急性期では黄斑浮腫が視力低下の原因になります。浮腫が軽度であれば自然軽快を期待できることもありますが、高度のときや悪化傾向があれば、浮腫の消褪(しょうたい)・軽減を図る治療を行います。現在では、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の眼内への注射が一般的ですが、再発を繰り返したり、毛細血管瘤(りゅう)などを伴ってくれば、網膜硝子体手術や眼底のレーザー処置(網膜光凝固)などの治療を考慮することもあります。広範な高度の血流障害(無灌流領域)を認めれば、異常な血管(網膜新生血管)の眼内への進展に伴う出血(硝子体出血)を予防するために網膜光凝固を行います。

網膜中心静脈閉塞症

 中高年での発症は、図bのように視神経内の眼球に近い部位での血栓が原因となることが多いと考えられています。網膜全域に及ぶ出血と浮腫を生じます。黄斑浮腫に伴う改善傾向のない視力低下に対して、抗VEGF薬による治療を行います。網膜全体が高度の無灌流状態に陥ると、予後不良の著しい視力低下をきたします。また、後に生じる失明に直結する重篤な病態の出現を防ぐために広範な網膜光凝固治療が必要になります。

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倉敷成人病センター((電)086―422―2111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月03日 更新)

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