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高位脛骨骨切り術(HTO)について 岡山旭東病院整形外科主任医長 横山勝道

よこやま・まさみち 落合高、川崎医大、同大学院卒。日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本人工関節学会に所属。日本整形外科学会専門医。「knee osteotomy forum」世話人。

【図1】術前O脚の様子(左)と術後X脚の様子

【図2】(左)脛骨を点線のように切り離し、矢印のように開きます (右)脛骨を切り離し、開いた部分に人工骨を挿入後、チタン製のスクリューとプレートで固定します

 皆さんは「変形性膝関節症」という病気をご存知でしょうか。この記事に興味をもって読んでいただいている方はご存知の方が多いと思います。しかし、この変形性膝関節症にはいろいろな型があるのは、あまり知られていません。

 変形性膝関節症の9割の方は、ある程度進行するとO脚となる内側型です。日本人は生まれつきO脚の人が多く、膝内側の軟骨は常に機械的なストレスにさらされます。運動や歩行で軟骨、半月板がすり減り、膝関節の水腫(関節に水がたまる)や痛みが生じます。さらに進行すると、軟骨の下にある骨まですり減ります。しかし、重要なことは、このような人でも膝外側の軟骨は正常である場合が多いということです。

▼HTOとは  

 重症な変形性膝関節症にたいして行われる「人工膝関節」という手術方法はご存知と思います。では、「高位脛骨(けいこつ)骨切り術」という方法はどうでしょうか。この手術方法は、日本ではおよそ人工膝関節の20分の1程度しか行われていない、あまり聞き慣れない方法です、しかし、先日、NHKの健康番組でこの方法が紹介され、にわかに脚光を浴びてきています。

 この「高位脛骨骨切り術」は略してHTOといいます。HTOは、O脚に変形したために膝関節の内側に偏った過度なストレスを、X脚に矯正することで正常な軟骨の存在する外側に移動させる手術です=図1参照。

 実はこの手術方法は数十年の歴史があり、以前は日本でもかなりの数が行われていましたが、最近ではほとんどこの手術を行う施設はなくなりました。その原因は、以前は手術後に体重をかけて歩けるようになるまでには2~3カ月を要し、入院期間が長期間に及んでいたためです。入院期間短縮、早期社会復帰を求められる現代の医療情勢に合わないこともあり、進化、普及した人工関節に変遷していったのです。

▼HTOの復活  

 数年前からHTOが大きく変わってきています。HTOにもいろいろな方法があるのですが、近年進化した方法は、脛骨を内側から切って、内側を拡大し、X脚をつくる方法です=図2左参照。この内側の拡大した部分に、骨にかわっていく人工骨が開発され、さらにその切った脛骨を、荷重に耐えられるように固定するチタン製のプレート、スクリューも開発されたのです=図2右参照。これによってHTOの入院期間が3~4週間へと短縮され、人工膝関節とほぼ変わらない程度の入院期間、リハビリで済むようになったのです。

 では、このHTOのメリットは何でしょうか。それは「活動性の維持」です。つまり、手術によって制限が生じないということです。人工膝関節は重症の変形性膝関節症に対応できる優れた手術方法ですが、スポーツ、重労働ができない、膝が曲がりにくくなるといった問題もまだ抱えています。HTOにはこのような制限がありません。そのため、HTOは、スポーツや農作業などを継続したいといった方、人工関節を受けるには若すぎるといった方が適応となります。

▼最後に  

 このように、手術に至るような膝の痛みがあっても、まだまだ活動性を維持できる治療法があります。心当たりのある方は、ぜひ、専門医療機関を受診してみてください。

◇ 岡山旭東病院((電)086―276―3231)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月17日 更新)

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