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成人後も先天性心疾患ケア 岡山大病院センター設立

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、生まれつき何らかの心臓病がある先天性心疾患の患者を将来にわたって診療する院内組織「成人先天性心疾患センター」を設立した。救命率の向上により患者は半数を成人が占める一方、成人後の診療もかかりつけの小児科医が続けているケースが多いとされ、心臓血管外科など12部門が連携した専門チームで対応する。

 岡山大病院によると、センターは心不全や不整脈のリスク管理を担う循環器内科、小児循環器科、再手術の検討を行う心臓血管外科をはじめ、産婦人科、看護部などで構成。患者情報を共有して最適な診療科で対応するほか、月1回の勉強会で先天性心疾患への理解を深める。8月に設置しており、現在、岡山県内外の約20人が利用しているという。

 日本成人先天性心疾患学会(東京)などによると、心臓の壁に穴が開いたり、血管に異常がある状態で生まれる赤ちゃんは国内で年間1万人に上るが、外科手術や内科治療の進歩で救命率が向上。患者は9割以上が成人期を迎えられるようになり、成人患者は50万人以上と推計されている。

 患者は加齢に伴い、不整脈や心不全を起こしやすいとされ、定期的な経過観察が欠かせない。再手術が必要かどうか、妊娠や出産、就職のリスクといった不安への対応も課題となる中、成人後も継続して小児科を受診する患者が多いことから「包括的な診療体制の構築が急務だった」(岡山大病院)という。

 「全国心臓病の子どもを守る会」岡山県支部の吉川綾子事務局長は成人患者について「どの診療科を受診すればいいか分からず、多くは小児科を頼っていた。大人として抵抗を感じる人もいただけに、センターは患者にとって光となる」と指摘する。

 岡山大病院によると、院内12の多部門による成人先天性心疾患の専門組織は全国でも珍しいという。センター長の伊藤浩教授は「これまでは成人患者を診る受け皿が乏しかった。多くの領域の専門分野が集積する大学病院のメリットを生かし、国内を代表する成人先天性心疾患の診療施設を目指す」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月08日 更新)

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