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大正、昭和の岡山大病院カルテ保存 地域医療検証へ文学部

岡山大文学部が保存、活用を進める同大病院の医療記録

 岡山大文学部は、同大病院(岡山市北区鹿田町)に残る大正から昭和にかけての膨大なカルテを歴史資料として保存、活用するプロジェクトを進めている。戦禍を乗り越えた貴重な現物資料で、段ボール5千箱にも及ぶだけに、今後の取り組みが注目される。

 同大によると、医療記録を保存、活用する動きは全国の大学でもほとんどなく、九州大、大阪大で一部が行われているのみという。医師法などで定められたカルテは5年、処方せんや手術記録、看護記録などは2年の保存義務期間が過ぎれば廃棄するのが通例だが、同大病院には前身の岡山県病院時代からのカルテが大量に残存。確認されたもので最も古いのは1921(大正10)年から昭和末期までの資料を中心に、内科、整形外科、耳鼻咽喉科、産婦人科、精神科など各科の判断で一部が保存されていた。

 資料の重要性に文学部の今津勝紀教授(日本史)が着目し、2013年から「大学が地域医療に果たしてきた役割を検証できるようにしておく必要がある」と、段ボール箱5千箱分ものカルテを同大(同津島中)に移し、保存活用を模索してきた。

 今津教授らは箱ごとに一定の識別番号を付け、診療科、大まかな年代などを記録。資料には個人情報が多数含まれるため、1月には学内の関係教員、ハンセン病の医療記録の保存を手掛けた広川和花・大阪大適塾記念センター准教授(医学史)ら他大学の研究者らが集まり研究会を開催。今後の課題と意義を確認した。

 研究が進めば、カルテからはさまざまな投薬の種類や治療状況など多彩な情報が読み取れ、医療社会学や地域医療史、大学史など多様な分野に活用が可能と期待される。一方で、長期的な保管場所▽どこから整理に着手するか▽資料の状態の維持▽公開方法―などの課題も多い。

 今津教授は今後も協議しながら分析を進める計画といい、「捨ててしまうのは簡単だが、これだけのビッグデータの中には、重要な資料が含まれる可能性が高い。学術資料として有効な活用ができるよう整理していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年02月27日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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