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仮死状態新生児に自己臍帯血 脳性まひ防止へ倉敷中央病院

 倉敷中央病院(倉敷市美和)は11日、仮死状態で生まれた新生児の脳性まひを防ぐため、自分の臍帯血(さいたいけつ)から分離した造血幹細胞を投与する国内初の「自己臍帯血幹細胞治療」を実施したと発表した。4月29日から治療に入り、順調に回復しているという。

 臍帯血は出産後の胎盤やへその緒に残る血液。血球の基になる造血幹細胞を多く含み、抗炎症作用や血管新生、神経細胞の発達を促すなどの効果が期待される。

 倉敷中央病院によると、20代の母親=岡山県内在住=が4月28日、同病院に緊急搬送され、帝王切開で男児を出産。男児は仮死状態で低酸素性虚血性脳症を発症していたため、脳細胞・組織の炎症を抑える低体温療法と並行し、家族の同意を得て29日から同治療を行った。

 臍帯血幹細胞を遠心分離装置にかけ、造血幹細胞を採取し、静脈に点滴した。治療開始から5日後には人工呼吸器が外れ、経過は順調という。

 低酸素性虚血性脳症で生まれた新生児は死亡か、脳性まひなどの重度神経後遺症を残すケースが多いとされるが、有効な治療法は乏しかった。

 今回の治療法は、大阪市立大大学院医学研究科の新宅治夫教授を中心に2012年から研究が始まり、倉敷中央病院の渡部晋一総合周産期母子医療センター長も参加。同病院は臨床研究実施施設として国に認可されている。

 新宅教授は「臍帯血から得た造血幹細胞の機能で、新生児の脳性まひのリスクを大幅に減らす効果が期待できる。成功事例を積み重ねていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年05月12日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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